下から2番目の男 | キャプテンニッポンのソウル温泉

キャプテンニッポンのソウル温泉

ウォンチュー,スリー,フォー,ファイブ,セックス,ヘブン!


 工場のベルの合図でこの街は動き始める
 あんまり言いたくないけど俺もそこで働いてる

 工場の機械の音が俺から耳を奪い取る
 時間を殺す場所さ 自分を殺す場所さ

 この街を流れる河は耐えきれない臭いがする
 この街を流れる河は耐えきれない臭いがする




小山卓治 『煙突のある街』


ブレイカーズが消滅してからブルーハーツの噂が
僕らの耳に聴こえてくる少し前までのあいだ、
マーシーをよく見かけた。ライブハウスの一番後ろの
壁にもたれて、若いバンドををまばたきもせず
見つめていたり、渋谷公会堂の前で誰かの来日公演の
ビラ配りをしていたり。マーシーはどうするんだ?


「小山卓治のアルバムに曲を書いて、その印税で
暮らしてるらしいよ」へえ。じゃビラなんか
配んなくたって。「でも小山卓治、だからさ」うん。


小山卓治はブルース・スプリングスティーンみたいな
今にして思えば、早すぎた尾崎、もっとリアルに
やさぐれた尾崎みたいな感じだった。この歌がそう。
あの頃はちょっと重すぎてとても受けつけなかったか。


貸しレコードで借りてきてテープに録ったけれど
熱心に聴き返すことはしなかった。だって『1985』は
すぐそこで、『未来は僕らの手の中』にあった。
僕は小山卓治を忘れた。でも今さっきふいに思い出した。



 責任逃れはできない 俺達どこへも行けない



「あきらめるなんて死ぬまでないから」と高らかに
宣言された革命の、やがて訪れるスコアレスドロー的な
終焉は、マーシー自身が予め見定めていた。世界は
どこまでもクソッタレで痛みはどこまでもつづくのだって
力ない諦念。でも倒れる間際の、絶体絶命の際からの
捨て身の同士討ち。さあ殺せ、ただしお前も道連れだぜ。


それがロックだ。オレたち、手負いのスカンクだ。









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