小学校の頃、自転車で
少しずつテリトリーを広げていく。下北から
駒場、羽根木、三軒茶屋。まあ大抵は公園とか
児童館を目指す、まあかわいい遠乗りなんだけど。
ある日、渋谷へ行こうと
誰かが。距離的にはまあ。電車ならほんの
数分だが、暗黙のうちに渋谷は親と行く街って
ことになってた。越えてはならぬ結界を感じてた。
越えた。城田くんと。
酒屋の息子。駒場、松濤を抜け、道玄坂
ラブホ街。センター街。蝉の声をきくたびに。
其処は大遊戯場渋谷。ああ。それは林檎さん(-_-;)
みるみる日は暮れてゆく。
蝉しぐれがみぞおちに刺さる。心細いし
腹もへった。帰ろうと云いかけたとき城田くんが
先を制した。「ラーメン食べようぜ」と。
今でもよく覚えてる。
宇田川町交番の真裏にあった、何の変哲も
ないどこにでもある中華屋だ。夢中であつい
ラーメンを啜った。城田くんは「この店のメンマ
不味い」と耳打ちしてきたが、そんなことはなかった。
うまかった。昔ながらの~
マルちゃんや幸楽苑がさ、万人のパブリック・
イメージを巧妙にすりかえているけどさ、それじゃ
ない。オレがあの日、喰ったラーメンは違うんだ。
湯気の質から違う。ただの
あっさり醤油か。違う。もっと醤油のカドが。
かるく八角が薫ってた気がするのは、九月の西日の
角度のせいなのか。
厚木『日の出製麺所』の東京ラーメン。
最初、厚木で東京とは何の
冗談かと思った。馬鹿なネーミングと鼻で
笑いながら啜ったときさ、脳がグラリと音を
たてて、九月の西日が。あの日と同じ角度から。
きょうも左九十度の角度から
強烈な光度をくらった。やがてそれは藤色の
空へと沈んだ。これか?これがそうなのか。
『勝訴ストリップ』ってこれなのか?林檎さん。
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