川本恵子様 | キャプテンニッポンのソウル温泉

キャプテンニッポンのソウル温泉

ウォンチュー,スリー,フォー,ファイブ,セックス,ヘブン!

『マイ・バック・ページ』を
買い直したついでに、川本三郎氏が
亡き妻への想いを綴った『いまも、君を想う』を。




感泣。とか帯に書いてあるが
もともと人の臨終に際して、自分でも
何故、と思うほど淡々としている。冷血だからか
非常識なロクデナシだからか、自分でもわからない。

そもそもご愁傷さま、って
どう云う意味だ。御焼香って何、あのおでこに
アレ。遠くで段々と、故人の在りし日を偲ぶ。
それじゃダメなのか。ブッダ。


まあそんな人でなしっぷりは
置いといて。『やせっぽちで、どこか
妖精のようだった』美大生は、思想がらみの
公安事件で前科のついたジャーナリストと
結婚し、ファッション評論家に。

川本恵子。故人はさん付け?
恵子さん。この女性はまったく素敵だ。
『いいものは二着』と云う恵子さん。

気に入った服や靴はふたつ
揃えて交互に。長持ち。なるほど。
またこんな。夫が女性誌で「近所のおいしい
店」だと「のり弁」をうれしそうにぶらさげて
いるのを見て、彼女は嘆く。


家の恥よ。団の面目丸つぶれだわ


応援団の漫画、からの引用。
そんな愛らしいレトリックが、オレの心を
捉えて離さない。葬儀の最中にあくびや腹を
鳴らしたりするくせにさ、こう云う切なさには
異様に敏感だ。胸が苦しくなる。

またこんな。アジサイが好き。
日本古来のガクアジサイが西洋に伝えられ
それがいまのアジサイになったこと。そんな
ことを教えてくれる、四季の移ろいをそっと
告げてくれる可憐さ。たおやかさ。

こんな愛くるしいエピソードが
無数に、淡々と散りばめられた追想記。
恋を追体験、疑似体験する感じ。いまこの
人がここにいたら。そう考えると胸のココが
締めつけられる感じ。心を寄せずには。


死者を弔う、ってそれで十分じゃないか。ブッダ。






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