小市民だ。守りの身。
山崎努に恫喝されるまでもなく
骨の髄までありきたり、だ。
それでもモラルやルールに
背を向けた夢を見る。ファンタジー。
必要悪。己自身が必要悪?そもそも
必要とされてるのか。どうだ。
モンティパイソンの奇才
テリー・ギリアムの映画『未来世紀ブラジル』は
そんなどこにでもいる小市民が幻想に呑まれていく
「ファンタジー」の傑作だ。
未来世紀、と銘打っているが
舞台は20世紀のどこか、レトロで
タイムレスな管理社会で暮らすひとりの男が
夢とうつつを移ろいながら繰り広げる
胸のすくようなファンタジー。
エンディングまでは。
まあ見てもらうしかないけど。オレは
映画館で見て、上映後、感動と虚脱感と
鳥肌のたつ恐怖と、やりきれない哀しさで
劇場スタッフに促されるまで30分くらい
立ち上がれなかった。
このサムという男は結局さ
オレでありアナタだ。オレも、アナタも、もっと
夢を見たっていい。ファンタジーに逃避して
何が悪い。
憂鬱な気持ちを抱えたままだって
夢のなかじゃ踊り続けりゃいい。たまには
灰色の現実から目を背けて、見たいものだけ
見りゃあいい。世界がこの先どこへ向かおうと。
たとえバッドエンドが待っていようとも。
世界が果てるか、オレかアナタか
どっちがポシャるが早いか。その日が来るまで。
ブラジル、というタイトルは
南米のサッカー強国とはまるで関係ない。
全編にわたり極彩色のファンタジーにたゆたう
サンバ・クラシック『ブラジルの水彩画』に由来。
絶対にアナタはこのメロディを知っているはず。
ブラジル
ブラジル色のブラジル
目くらましの黒い国
おまえの歌を歌おう
その胸から生まれるサンバを
揺れるスイング
我が愛するブラジル
神の土地
過去の扉を開けよう
セハードの黒人乳母を取り出し
コンガードにはコンゴの王を
吟遊詩人たちよ 再び歌え
メランコリックな月夜に
その恋歌のすべてを
レースのドレスを引きずりながら
サロンを巡っていく貴婦人よ
お前を見たい
豊かに実をつける獅子の木に
ハンモックをくくりつけ
明るい月夜を過ごす
囁きかける泉たち
我が渇きを癒してくれる場所
月も訪れ 戯れる
ああ 小麦色が美しいブラジルよ
おまえこそ ブラジル色の我がブラジル
サンバとパンデイロの土地
'Aquarela Do Brasil'
Caramba!
心はいつだって自由じゃん。我自由丸。
Android携帯からの投稿
