読売新聞の朝刊に

今春卒業した大学生のうち、正社員など正規雇用で就職した割合が載っていた。

男子:57.7%
女子:66.4%


さて皆さんは、この数値をどのように考えるだろうか?

「ヒトラーの経済政策」(武田知弘著:祥伝社新書)という本を以前読んだ。その中にとても興味深い一節があった。

この本は、「ヒトラーが当時のドイツにおいて絶大な人気を集めたのは、演説の巧みさや強いリーダーを望む大衆の空気という側面のみならず、当時の経済政策・雇用政策・福祉政策により劇的な復興を成し遂げたことが大きい」という論調の下、個々の具体的政策を検証しているのである。

私が最も興味深く読んだのは、ヒトラーの少子化・ニート対策(P63)である。

以下要約

◆結婚できない貧しい若者(ワーキングプア)達のために、「結婚貸付金制度」を設け、1000マルクを無利子で借りられるようにした。(現在の日本円に換算すると200万円程度)この貸付金は、子どもを一人生むごとに返済金の1/4が減額され、4人産むと全額免除となった。
これは少子化対策である一方で、雇用対策でもあった。
ナチス政権は、女性を家庭に帰そうという政策を採った。それは家庭で子どもを産み育ててもらうためでもあったが、如何にして男性失業者を減らすかという工夫でもあった。
「女性が失業しても社会に与える不安は少ないが、男性が失業すると、大きな社会不安になったからだ」


現代の日本社会でこのようなことを公言すると、世の女性たちから一斉に糾弾されそうであるが、私は一つの真理をついていると思っている。

何故ならば、「無職」という条件は、女性にとっては結婚できない理由にならない場合が多いが(家事手伝い等)、男性の場合、結婚の前提には経済力が必要だからである。(まれに愛があれば何もいらないというパターンは、ごく少数なので除く。)

社会には無限の雇用先があるわけではない。一定の雇用というパイを巡って、若者たちは自らの能力を会社にプレゼンし、雇用という椅子を獲得しなければならない。

対等な条件で就活をすれば、努力家で真面目な女性の方が有能な場合が多いだろう。しかし、それによって職に在りつけない男性の社会に与える不安定要素を、政治は見落としてはならないことを、この本から考えさせられたのである。

雇用政策を考える際、男女の性別によって社会の役割のどの部分をお互いに担っていくのかということを、社会全体を捉える目を持って議論する必要があるのではないだろうかと思う。

(※決して女性を軽んじているわけではないことを付け加えておきます。)