本日、参議院外交防衛委員会にて、いわゆる「日韓図書協定」の締結をめぐり審議がなされました。委員の多くが、気持ちでは「こんなのおかしい」と思う気持ちを抑えきれず、質疑では政府の外交上の不作為に厳しい意見が相次ぎました。

議論が収束し、私は反対側を代表して反対討論を行いました。

以下、そのまま原文です。

外交防衛委員会(H23.5.26)「日韓図書協定」反対討論
参議院議員 宇都隆史

私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました「図書に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定」に対しまして、反対の立場から討論を行います。

一昨日、本件の審議に資すため、本委員会は、宮内庁書陵部を視察し、朝鮮王朝儀軌を始めとした、図書の一部を視察しました。色鮮やかな図画と共に一つ一つ手書きによって詳細に記録された歴史の断片は、返還を望む韓国の人々の想いを汲むのに十分なものでありました。
しかしながら、これらの図書は、我が国が正規の手順を踏んで入手した国有財産である以上、感傷に基づく友愛主義によって、安易に譲渡することは、国際外交の常道を逸脱する行為であり、我が国の体面と威信を著しく損なうことを思慮せねばなりません。

反対の理由は以下の三点です。
第一に、締結に至る経緯があまりに拙速である点を指摘いたします。国権の最高機関たる国会において、慎重かつ十分な審議も経ず、日韓併合百周年の節目に当たる昨年八月十日、政府は突如、総理大臣談話を発表し、その中で「朝鮮王朝儀軌等の朝鮮半島由来の貴重な図書について、近くこれらをお渡ししたい」と公言しました。国民よりも先に外国に約束しておき、その成立に異議を唱える声に対し「野党の邪魔により足踏みしている」と首相自らが批判するなど言語道断です。政権を担う矜持や至誠の一片もなき独善的かつ驕慢な政治姿勢と、国会の権威を失墜させた愚挙に対し、強く抗議いたします。

第二に、本協定が、更なる政治的譲歩を要求されかねない点を指摘いたします。日本と韓国との関係は、一九六五年六月二十二日に締結された、いわゆる「日韓基本条約」に付随するいわゆる「日韓請求権並びに経済協力協定」により、相互の請求権に関する問題は完全かつ最終的に解決されています。しかし、本協定は「植民地支配の反省とお詫び」を図書返還という形で表した、極めて佞姦的な外交手法であり、先人の叡智に基づく労を水泡に帰す反国家的所業と言わざるを得ません。先の条約によって解決済みの問題についてまで、交渉の余地ありという誤った示唆を与える危険性を強く危惧いたします。

第三に、本協定を締結するための、双方の環境が整っていないことを指摘いたします。韓国は、我が国固有の領土である竹島に半世紀以上も不法占拠したまま、未だ解決の糸口すら見えておりません。しかも、民主党政権が誕生して以降は、竹島の実効支配の強化が急加速しています。一昨日、韓国の国会議員三名が、わが国固有の領土である北方領土に対し、我が国の許可を得ず不法入国し、主権を侵害しましたが、先の日韓首脳会談において、菅総理は抗議するどころか議題にすらしませんでした。
このような環境下で、あえて片務的な本協定を自ら進んで締結することの外交的意義が、多くの日本国民には全く理解できないのです。周辺諸国にも誤った外交意思を示唆する恐れがあり、我が国民に対しても、不必要な反韓感情を煽りかねず、「未来志向の日韓関係」に繋がるとは到底思われません。

以上、本協定成立に反対する理由を述べましたが、大韓民国は、我が国との歴史的関係も深く、また共に自由と民主主義を愛する国家であり、共栄共存を図らねばならない隣国です。我々自由民主党は、日韓両国の友好的未来関係を否定するものではなく、互いを理解し、至誠と信義に基づいた真の共存関係を築くことを欲するものであることを申し添えと共に、委員の皆様の良心に訴え、私の反対討論を終わります。


討論の後の採決です。

訴えは届かず、民主党、公明党、みんなの党、社民党議員はすべて賛成挙手。

反対したのは自民党のみで、可決されました。(その他の党の議員は委員におりません)

本当に無念です…。