昨日、予定通りロシアのメドベーージェフ大統領が、国後島を訪問しました。

この行動の裏には、様々な思惑があるようです。

もともと、プーチン&メドベージェフ体制(以下、「プ&メ」と表記)は、ゴルバチョフ-エリツィンが推進したペレストロイカへのアンチテーゼとしての期待を受けて誕生しています。

それは対日外交にも現れていて、北方四島について返還の交渉に応じてきた前政権の外交を否定し、「歯舞・色丹の2島返還で領土問題に終止符を打つ」というのが、プ&メの北方領土における基本的スタンスです。

今回の国後訪問については、三つの目的を持ってたと考えます。
①ロシア国内の保守系に対して、対日的強硬姿勢を強調し、「強い大統領」のイメージ戦略の一環。
②9/2の対日戦勝記念日に見られるように、「ソ連が、日帝の支配から朝鮮・樺太・千島を解放した」とする歴史認識を強調することで、国民の愛国心を高揚させる狙い。
③国際社会に対し、国後・択捉における事実上のロシアの実効支配をアピールし、二島返還が妥当であるという国際世論構築のための布石。


尖閣問題と時を同じくしたので、いかにもその事件が起きてから動き出したように見えますが、中国の訪問も国後の訪問も、事前に計画されていたようです。勿論、ロシアもこんな千載一遇のチャンスを見逃すわけはありませんから、中国との共闘の姿勢を演出したのでしょう。
しかし、中露がお互いに価値観を共有し、同盟国と呼べるほど信頼しているかといえば、そんなことはありません。ロシアにとっては中国の経済発展と軍事力増強が一番の脅威ですし、中国にとっても、それは同じことです。いわば、二国の関係は「呉越同舟」。日米の相互信頼を基礎とした同盟関係とは大きく異なります。

さすれば!如何にして中露の挟み撃ち外交に対応するかを逡巡せねばなりません。

第一に、双方を同時に相手にしないことビックリマーク
「北方領土は領土問題だけど、尖閣にはそもそも領土問題すら存在しない。」という基本姿勢を崩さず、交渉は各個撃破を前提としなければならない。ビックリマーク特に、歴史問題に関しては腰を据えて、日本の主張を根気強く毅然とぶつけ続けることです。また、国内の問題(靖国参拝、教科書問題等)に関しては、「内政干渉である」と取り合わないことが最良の対応です。

第二に、こちらも挟み撃ち外交を模倣せよビックリマーク
ロシアに対しては、EUとの関係の構築により挟み撃ちし、中国に対しては、インドとの関係の構築による挟み撃ちにすべきです。そこで、忘れてならないのは、米国との関係を最重要視することビックリマーク日本独自で、群を抜いた軍事力を持つわけでもなく、核抑止力を持つわけでもない現状では、外交力など無きに等しいことを強く認識し、いつの日か独力で排除できる軍事力を保持するまでは、日米関係を強固に繋ぎとめておかねばなりません。

第三に、中・露の離反を計れビックリマーク
中国、ロシア共に、「政冷」には強気に出れても、「経冷」は本気では望みません。経済がグローバル化している今日、経済的ダメージというのは片方だけに生じるわけではなく、双方にダメージを及ぼします。(勿論そのダメージの、それぞれの国内における程度の差はある。)そこで、中国とロシアを上手に競わせ、あるいは翻弄しながら、双方の、「政治的には対立しても、経済的メリットだけは手放したくない」という下心を利用することです。


外交交渉は言い換えれば、チキンレースです。どちらも、破滅に向かって最後までブレーキを踏まないなんてことはありません。ですから、
①政治的対立 ⇒ ②経済関係の冷え込み ⇒ ③国交断絶 ⇒ ④武力衝突
と考えるのは全く現実的でなく、当然お互いに②から③に移行する前に、落としどころを模索する水面下の交渉が生起するのです。そこからが、本物の外交交渉の始まりです。初めから政治的対立を恐れて妥協していては、外交交渉の土俵にも上がれません。外交の土俵に上がるということは、対立する姿勢を示すところから始まるのです。