中華民国(以下、台湾)は、中華人民共和国(以下、中共)から正式に国家として認められていません。

一時は独立運動の気風が高まっていた時代もありましたが(李登輝時代)、現在の馬英九政権では「統一せず、独立せず、武器を用いず」の「3つのノー」方針に則り、経済的利益を優先し、体制としては現状維持を望んでいるようです。シラー

このような状況ですから、台湾と中共との外交は、国と国という形式を取れません。そのため、中共に対しては「財団法人 海峡交流基金会」という名称の民間団体を設立し、中共との交渉に当たっているそうです。(その他の国に対しては外交部の所掌) 

中共を最大の貿易相手国とする台湾は、経済面において巨大な中国マーケットに対する依存度が高く、今年の6月には「両岸経済協力枠組み取り決め(ECFA:エクファ)」を締結したばかり。それ以降、中共の台湾に対する経済的規制も徐々に緩和されつつあるようですが、中共からの個人での観光旅行は未だ制限があるなど、中共側としては、自由・民主主義陣営に対する警戒感を維持することに余念が無いようです。

今回は、海峡交流基金会の高理事長との意見交換をすることができました。
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高理事長のお話の中で、中共との外交折衝において特に参考になったことは、「いかにして中共の面子を保ちつつ、交渉を進めるか」という努力姿勢でした。締結する文章の文言一つとっても、中共のプライドを傷つけるような文言を回避するなどの、中共を心情的に上手く御していく外交術を台湾はわきまえて付き合っているのです。日本の外交が学ぶべきところ大であると思いました。

私が質問したしたのは、FTAやEPAといった貿易連携に関してです。確かに、短期的視点で見れば、関税の排除に伴う貿易上のメリット等はあるのでしょうが、自由競争にそぐわない第一次産業(農林水産業)や国内零細企業の保護という面からのデメリットをどう考えているのか、という質問です。

高理事長の回答では、「食糧自給問題に関しては、輸入元を分散し、一箇所に対する依存を回避している」という回答でした。しかし、台湾海峡有事を考えると、他国からの民間輸送が平時と同様に行われることは極めて考えにくく、戦略性を見出せませんでした。また、「経済の自由化を進めることによって、より中共に対する依存度が増し、気がつくと中共に取り込まれていることになるリスクを孕まないか」という質問に対しても、「内需の拡大のための国内産業に対する投資を優先するので、長期的にもメリットが大きい」とする考え方には、少し楽観的にすぎる印象を受けました。

しかし、少なくとも現在の日本に比べると法人税を17%に、贈与税を10%に削るなどして、内需の拡大に真剣に努力している点は大きく異なります。現在の民主党政権のアンチ・ビジネスともいうべき経済政策で、国内雇用を喪失している日本とは比べ物にならないくらいの緊張感を持って、経済タイフーンともいうべき中共との駆け引きを続ける台湾のすがたが、私の目には眩しく映りました。目