男のゴールデンタイム | 酒とホラの日々。

男のゴールデンタイム

昨日、某市の警察病院にE君の身柄の引き取りに行ってきた。

私にしたって、こんなのはそうそうある事ではない。
 
断っておくが、引き取ったのは身柄であって遺体の引き取りではない。本人は警察の厄介になったとはいえ全治3日の軽症でぴんぴんしている。

 
本来ならこの後、E君は留置所に移送されてしかるべきところ、収容後の調べで犯罪の恐れの薄いことと、身元が確かで逃亡の恐れの無いことから、しかるべき人による身柄引き取りを条件に、とりあえずの放免となったのである。
 
E君はれっきとした堅気の勤め人であり、別居中とはいえ家族もいる。
しかしながら、ことがことだけに身柄引取りを勤め先や家族に頼むわけには行かず、このたびの私の登場となったのだ。


このE君逮捕の事情には少々の説明が必要だ。


・・・ことの起こりはこのゴールデンウィーク、E君はけんか中の奥さんとよりを戻すために話し合いの場をもったのだが、まだ事態はそれほどよじれていない(と思っていた)から、リラックスした温泉のある首都近郊のホテルをセッティングして、奥さんの到着を待っていた。

 

奥さんを待つ間、E君はせっかくだから温泉に入っていようと思ったのだが、ホテルには内風呂と少しはなれたところに露天の外風呂とがあり、E君はホテルの前の商店街を抜け、坂の小道を下った先にある外風呂にはいったのだった。

 

ところが、温泉から上がると、さっき脱いだはずの衣服がなかった。

 
事故か、いたずらか、あるいはサルが引いていったのか、どうしたわけか脱衣かごごとすべての衣服は消えていたのだ。

 

ホテルは坂の上の商店街の向こうだし、奥さんのやってくる時間は迫ってくる。
あわてたE君は風呂と脱衣小屋をくまなく探し回ったのだが、下着一枚すら無いものは無い。そうこうしているうちにどうしたはずみか、女風呂の脱衣所に入り込んでしまい、せめて何か布キレ一枚でも拝借しようかと思った矢先に女性客に見咎められて、背中に悲鳴を浴びながらその場を逃げ出すこととなった。
 
いかん!、これでは変質者として通報されてしまう、とE君は全力ダッシュで商店街に続く坂道を駆け上ったのだが、商店街の手前でふと気がつくと、右手には逃げ出すはずみに思わず握り締めていたらしい、女物のストッキングがあった。

たしかに布キレ一枚だがストッキング一枚では男はつらい。

  
だが、商店街を抜けないとホテルにはたどり着かないし、とても下の風呂にはもう戻れない。そこで
E君は意を決して、ストッキングを身にまとってまた駆け出したのだが、布をまとったのは顔であった。E君としては、なけなしの布キレ一枚(盗品だが)で出来うる限りの最善の策を考えたのだ。

 
この結果、パンストを頭からかぶった全裸男が突如街中に出現したのである。
 
ここで次の誤算は、頭に血の上ったE君がホテルにまっすぐたどり着くことが出来ずに商店街を右往左往して駆け回ってしまったことである。
商店街はパニックとなって、あちこちで悲鳴と怒声が起き、なにかとんでもない犯罪者とみなされたE君には、石を投げるものや犬をけしかける者まで現れた。

 

ちょうどそこへ奥さんが到着したのだが、奥さんがはじめに目にしたのはホテルの駐車場に追い詰められた犯人が、全裸でパンストをかぶり、どこかで拾ったらしいボロ傘を持って犬と戦う姿であった。

 

奥さんも石を投げて犬のほうに加勢したらしいが、この状況ではしかたあるまい。
  
直後、E君は駆けつけた警官に連行されて救われ、この日奥さんと会うことはなかった。いや、私に身元の引きうけを頼むくらいだから、それからも会ってはおるまい。
  

 
・・・いずれにせよ、男には必死で頑張らねばならない時というものがある。

E君だって、より戻しのために、文字通り裸一貫で必死に頑張ったのだから、
奥さんもこの努力を認めてあげてほしいものだ。






                          (匿名を条件にブログ公開、E君許諾済み)