いかにして私は伝説のハード・ロックから21世紀のメゾ・ソプラノに転向したか
オフィス街に隣接するアートフォーラムの前を女友達と歩いて通り過ぎるとき、急に彼女が振り向いて、いたずらっぽい目で少し挑発するように言った。 私は電車で移動の時、携帯オーディオプレーヤーで音楽を聴いているが、よく難しそうな顔をしていることがあるらしい。彼女はそれを冷やかしているのだろうかと思った。
「そんなことはない。ベートーベンのピアノ協奏曲は1番に限る。」
「ふふ、それは合格。でもあとは?」
「ベートーベンのピアノソナタとバッハのプレリュードとフーガと
あとは・・、うーん。」
「あとは生まれる前のロックばっかりなんでしょう?。偏食よね。」
「それを言うなら、バッハもベートーベンもモーツァルトだって
生まれる前の人なんだから同じじゃないか。」
とは言ったものの、確かについつい選曲は片寄りがちだ。では今なら私はいったい何を聴いたらいい?ときくとCDショップに立ち寄って、あなたにはこれが合うと、彼女が勧めてくれたのがこのアルバムである。確かに私は声楽曲を聴くことは少ないし、女声ものとなるとさらに聴く機会はない。しかもこのキャサリン・ジェンキンスはメゾ・ソプラノという微妙な声域で、まず私が自分から手を出すことはなかったことだろう。
このアルバムは(ベスト盤だが)聞き覚えのある有名なクラシック曲からポピュラーまで選曲は幅広く、声楽曲の門外漢にもとても親しみやすい。彼女も実に絶妙なポイントを押さえたCDを勧めてくれたと言える。だだその日、家でアルバムジャケットを眺めていたら、この歌手の表情が彼女とよく似ていることに気がついた。キャサリン・ジェンキンスはイギリス人だし、日本人の彼女とはまるで顔立ちも違うと思うし、他の写真はそんな感じは受けないのだけれど、この写真では見れば見るほど表情の印象や面影が似ているような気がしてくる。そこにも彼女の意図があったのだろうか?。
今はすっかり声楽の楽しさ、メゾ・ソプラノの奥深さ、ついでに言うならキャサリン・ジェンキンスの魅力にすっかりはまってしまっているのだが、歌手と推薦者の両方が、ちょっと気になる音楽鑑賞の秋でもある。。。
写真のアルバムは『フロム・ザ・ハート キャサリン・ジェンキンス・ベスト』
