夏至の日のシーサイド・バー
朝から雨が降ったり止んだりのはっきりしない天気に、特に予定もないとなると、今日がどうしたということもなくなんとなく一日が過ぎていくような気がする。 そんな予感が朝からできあがってしまうことがある。
もやった空気と、予定のない宙ぶらりんな気分を打ち払うように、空の具合を見ながら、ふわふわとまとわりつく雨粒を縫うようにして自転車で海の近くに出かけてみた。
マリーナに係留されたヨットが並ぶ、誰もいない海岸には生ぬるい潮風が吹き抜けて、時折走る車の音が分解した何の音かわからない遠いざわめきが聞こえて来るだけだった。
まるでうち捨てられたレジャー施設の遺跡のようだが、私はこんなヒトケのない週末だけの現代の廃墟が決して嫌いではない。
しばらく海沿いの道をぶらぶらと歩いてみると、白いペンキ塗りの板張り洋風の小さな建物に出くわした。きれいに手入れはされてはいるが建てられてからだいぶ経つのだろう。補修し塗り重ねられた跡が積み重ねてきた時代を感じる。
そこは昼は喫茶で夜はバーとなる店だった。
客のいない店内に入り、ギニスを1パイント注文したが、1パイントで済むはずはなく、こんな時には車でこなかったことのありがたみを感じるものだ。窓から流れ込む適当にひんやりとして適当に湿って生ぬるい風に包まれて、軽い酔いに身を任せるのは、自転車で移動しているときの心地よさに似ている。
相変わらず曇って乳白色の空気に満たされたような外から、ゆっくりと目を店内に移すと、天井からは大きなガラスの球体がぶら下がって光を放っているのに気がついた。このなんともいえず変わったオブジェに見とれていると店主が言った。
「夏至ですからね。太陽に感謝しなくちゃ」
オブジェは太陽の代わりというわけなのだろう。
ようやく私は今日が夏至の日、一年で一番昼の長い一日だったことに気がついたのだった。
なるほど、曇りで日の射さない夏至の日の過ごし方としてはこれも悪くない。