じゃんばら屋の春 | 酒とホラの日々。

じゃんばら屋の春

衰退していく町というものは、あきらめに似たような静寂さとただひたすら時間の経過を耐えているような様相を見せる。うちの近くにも大資本のショッピングセンターに客を奪われ、衰弱死を待つような商店街があるのだが、ここでは季節の動きすら鈍く、春すらよけて通るような町並みを歩くのはそれだけで気が滅入るものだ。

 

ここ十年ほどの間にすっかり歯抜けになってしまったそんな商店街の一角にジャンバラ屋という古着屋がある。
錆びたシャッターのおりた店舗跡にはさまれて、店の外まで商品の古着やぼろがあふれ出した店の様子は異様な迫力があって、店を訪れる客もまた一風変わった風体の客が多い。アメカジが主体の商品は店主が直接海外で買い付けてくるので、品質は一定しないものの、国内だけで回っている店とは品揃えが一味違うのだそうだ。

 

店主というのは五十台半ばと思われる男だが、いつも70年ごろの映画から抜け出してきたような姿をしている。天頂の薄くなった長髪にバンダナを巻き、ベルボトムのジーンズに花柄のような派手なシャツというのがお決まりの格好だ。きっと30年以上そんな格好をしているのだろう。
  
この店主がどうしたことかこのほど結婚する運びになったらしい。 相手はこれまたどうしたことか30くらいの美人で、店主に上を行くアメリカかぶれじみた格好をしている。
  
彼女の意向によって、近隣の店舗跡を買い取り、海外からの若い旅行客を受け入れる安い宿屋をやりたいという話を聞いた。ユースホステルのようなものなのだろうか。
  
資金やなにやら開設準備が整うまでしばらくは古着屋をやっていくようだが、気の早いことに派手なホテルの看板がもう掲げてられている。 準備や改装やら雑誌の取材やらのために頻繁に人が行き交うようになったこの通りにも華やいだ話題と眺めが戻ってきたようだが、それにしてもこれもまた衰退する商店街がグローバリズムという価値観の混交を乗り越えていくひとつの回答なのだろうか。
  
とにもかくにも古着屋にもこの商店街にも、たしかに遅い春が巡って来たようだ。