豊かな食品産業のはぐくむ、豊かな日本の食文化
友人のN氏はあの大規模ファーストフードチェーン、アクドナルドの店長をしている。
都内のおしゃれな一角に大きな店を構えてたいそう忙しいのだが、
全国有数の看板店舗であるのはN氏の自慢だ。
ちょうど今、アクドナルドが新商品「ミステリアス・フライド・アック」を
全国展開しているのをご存知だろうか。
あの新商品のコマーシャル撮影だってN氏の店で行われたものなのだ。
撮影当日はアクドナルドのイメージキャラクターを勤める人気モデルの女性をはじめ
多数の関係者とアクドナルド社の社長も来店していた。
撮影ではモデルの女性がアクドナルドの社長と一緒に
新商品ミステリアス・フライド・アックをおいしそうに食べるものだったが、
撮影前にN氏は社長にエスコートされたモデルさんに挨拶をした。
「今日はご苦労様です。当店で撮影があるなんて光栄です。
いつもアクドナルドを召し上がっているのですか。」
するとモデルの女はむっとしたように不機嫌に吐き捨てた。
「ええ~?、あんなナニ使ってるかわからないゲロアブラしょっぱいの
食べるわけないじゃない。モデルをなめんじゃないよ!」
すぐにアクドの社長も不愉快そうな顔をして割り込んだ。
「なんだ君、失礼じゃないか。私たちはアクドナルドでビジネスはしているが、
あんなもの食うのは、馬鹿と貧乏人だけだ」
あっけにとられるN氏を残して二人は撮影の準備に行ってしまった。
N氏はそれでも撮影に使う新商品の準備をせねばならなかった。
撮影で社長とモデルが並んで食べる「フライが決め手の新バーガー」は、
店長自らが油で揚げることになっていたからだ。
確かにアクドナルドなどを常食するのは何も考えない愚か者だろう。
栄養バランスなど考慮の外だし、卑俗で粗雑な味はいったい何が旨いのかもわからなくする。
アクドが安い肉や穀物を入手するために乱開発や低賃金労働を強いているのも公然のことだ。
N氏が呆然としながらも厨房に向かうと、ちょうど店の裏口には出来立ての大きな犬の○ンが
湯気を立てていた。近くのマナーの悪い犬の飼い主が始末もしなかったらしい。
あるいはアクドナルドに批判的な人間が抗議のつもりで主要店に目をつけたのかもしれない。
N氏は黙々と犬のフ○を拾うと、これを厨房でコロモをつけ油で揚げてパンにはさんだ。
社長とモデルへの撮影用のスペシャルというか、
普段食べもしないあのふたりにとっては何を食っても同じことだろう。
カメラの前で作りたてのミステリアス・フライド・アックを口にした二人は
一瞬目をむいたのだが、すぐに気を取り直して叫んだ。
「おいしー!、アックってめっちゃ最高!!」
やがて全国放送されたCMには、ホカホカと揚げたてのアックを
口いっぱいにほおばる二人の笑顔があった。
*
相変わらず店は繁盛しているが、こんなんでいいのか、と
時々ふと、疑問にまとわりつかれるようになったN氏である。