春の小道 | 酒とホラの日々。

春の小道

家からほど近く、地面が土塁の跡のように長く細く盛り上がったところに桜の木が植えられて並木道となっている。 今日もそんな桜の下を歩くと、春の陽光が道の上にふくらんだ蕾の影を落としていたが、やがては花の雨降る桜のトンネルも、今はまだほのかに薄紅の春霞をまとったような無数の枝が連なっていくだけだ。

 

満開の桜はすばらしいことに異論はない。だが桜がその枝の周りの空気に何かを帯びさせるほころび始めの短い時期、淡くピンクの混じったくすんだ木肌のカントリーカラーが私は好きだ。

 

そんな枝と蕾の影が織りなす足元のまだら模様を踏んで歩くのがうれしくて地面を見渡していると、思いもかけず小さな花にもよく出会うこともある。

 

桜は顕然たる春の大プロジェクトだが、路肩で精一杯花びらを広げる小さな花が紡ぎ出す春もまたその春の価値において何ら劣るところはないのだ。 咲き始めた桜を追いかけ、桜を見て春を見ない花見客が足元の花を踏みつけて顧みないことがないようにと、ちょっとだけ願った。
 
ハナニラ