ザンジバルの風月に罪はない

ある日一通の国際郵便が届いた。
差出人は学生時代の友人。発信地はザンジバルである。ザンジバルというのはアフリカの東岸、タンザニアの沖の小島であるが、今はそこに行っているようだ。
アフリカとはほぼ無縁の私にとって、ザンジバルについてわずかな知識は、故フレディー・マーキュリーの出生地、また古くはオマーン帝国の属領だから、目に浮かぶ風景のイメージといえば、アラブ風の香りの残る風俗の行きかう一見優美な南国の貿易中継地。それからザンジバルという誰かの楽曲があったような気もする。
要するに名前以外何も知らないに等しい地の果てからの手紙である。
軽く検索してみると、今は世界で一番美しい島というキャッチフレーズがつくくらい風光明媚な観光地であるらしい。
楽曲のほうはアダモ?ふーん、フランスのムード歌謡歌手みたいなヤツなんだろうか、こっちは無縁・無関心の世界だな。 風趣豊かな南国の地、いいねえ、とは思うがもちろん行く気もない。 すると横で画面を見ていたB女が割り込んできた。
「ねえ、ここちょっといいんじゃない? 行ってみない?」
「いやだ。”絶対”行きたくない」
「なんで0.1秒もかからずそんな答えするかなー。 どうしてそんなに出不精なのよ」
「デブ症? 言っておくがオレはデブではない。これはみんな筋肉だ。体脂肪率は12パーセントでちょうどいい」
「何の話してるのよ。久々に海外旅行もいいじゃない」
「オレと外国の空気とは肌が合わないからいやなんだよ。お前だって水が合わずに腹下しが止まらなかったことがあったじゃないか。おれは土地が変わると途端に便通が不順になるんだよ」
「なによ、ヘンクツ
「・・青い空と透き通った海、吹き抜けるそよ風と宝石箱のようなきれいな街並み・・おしゃれなリゾートウェアで軽やかに通り過ぎる人たちは・・トイレを探してまっしぐら。
いいかぁ、オレはな、青い空も白い雲も海のそよ風もみーんな嫌いだが、この世で何より嫌いなのがなかなか出てこない石みたいな硬いウンコだ!出てこないウンコと歩き回るくらいなら、バカ役人が観光村おこしで作った毒キノコ村にでも行ったっておんなじなんだよ。
・・・だから行かないわけ」
海外で排便トラブルを起こす人は実はとても多いらしい。
いずれにせよ大日本下品党には公費ただ乗りの海外視察旅行は、ない。