地上の愛は、プライスレス
この地球というのは妙なところだ。愛はお金では買えないと流行の恋愛小説にも書いてあるし、テレビのCMもはやり歌も繰り返しわめいているのに、これはみんなウソである。
どこに行っても愛の販売所や斡旋所が溢れているし、路上販売や無店舗販売もあれば、電話で出前だって気軽に頼めるのだ。そもそも新聞雑誌には広告が多数掲載されているし、毎日勧誘メールもたくさんやってくる。
実際、このたび観光にやってきた私も、多数の販売所の立ち並ぶヨシワラ、ヨコハマ、カワサキ、それにオゴト、ススキノ、などというところで様々な愛を購入できて満足している。
それに一度、昼間、黒服のシンキ臭い女が「神様の愛を信じなさい」と路上でがなっていたので、「いくらだ?」と聞いたら、物陰でタダで愛をくれたこともあった。地球人ではこうした「なんぱー」とかいう無償の愛の交換も盛んであるらしい。私はこれをきっかけに路上や酒場でタダの愛もいろいろと調達してみた。
もっとも紳士の金星人としては、下等な地球の原住民相手とはいっても紙切れやタダというわけにも行かないから、彼らにはこっそりとお礼を与えておいたのではあるが。
これは愛への依存とスリルを与えてくれる媚薬のようなもので、私から地球人へのプレゼントだ。
さて、長期の滞在を終えた私は金星に帰ることになった。ふと目にしたテレビのニュースでは手のほどこしようのない新型のエイズが発生して死者激増の懸念があるといっていたが、私の素敵なプレゼントも地球人の感受性ではそのようにとらえられるのだろうか。
まあ愛と死は裏腹なものだ。どうか地球人の愛を通じてせっせとスリルを広めてみんなで楽しんで欲しい。