蒼ざめた宇宙飛行士
カプセルの中にアラームが響き
覚醒しようとした私を、猛烈な吐き気と頭痛が襲った。
活動を再開しようとする私を世界が拒否して混沌界に押しとどめようとするかのようだ。
これはコールドスリープシステムの不備だろうか、
カプセル内の与圧の調整はどうなっているのだろう。
それでも私は途切れた記憶を必死でたぐってこの世界の入り口を探した。
すぐに現れたモニターを確認すると、私が星間宇宙船に搭乗後
コールドスリープに入って20年が経過していた。
まもなくD57星系の惑星eに到着する。かつて宇宙フロンティア開拓時代に
殖民星として大量の地球人が入植した惑星eにネイティブの地球人が
訪れるのは120年ぶりとなるのだ。
コールドスリープの期間もプログラムにも問題がない、
計器類も順調だ。
それにしてもこの頭痛と吐き気はなんだろう。
やがて到着した私を待っていたのは母星地球からやってきた
宇宙飛行士としての大歓迎だった。
何万人もの歓呼の声に迎えられ、凱旋した大英雄のように
赤いじゅうたんの上をこの星の司令官のもとへ導かれた。
だが大観衆の前で、私は吐いた。 吐いて吐いて身をよじり、
胃液と涙と鼻水にまみれてのたうちまわった。
空っぽの胃から出る黄色い液体のすえた臭いにまみれて私は
コールドスリープ前に酒盛りをして飲みすぎたことを思い出したのだった。
20年越の二日酔いは宇宙の闇のように深かった。