夕時の影踏み
暑さも一進一退をしながら中秋へと向うこの時期、
まだまだ夏を引きずった気分で油断して出かけていると
たちまちあたりが暮れ色を帯びてくるその早さに驚くことがある。
こうした秋の夕暮れ時というのは、地面に長く伸びた影が
帰り道を長く遠く錯覚させる不思議な時間帯だ。
まだ着かない家を思い、急に歩きつかれてべそをかいた子供のころの
心細い記憶がそこここに見え隠れしている。
かつては誰もが知っていた当たり前のことだが、
実は秋の夕暮れには魔物が潜んでいるのだ。
夕暮れの魔物が子供を夕闇にひきとめ家に帰すまいと魔力を放つと、
子供たちには、疲れと心細さと闇に引き込まれる不安が
ひたひたと迫ってくる。
それでも夕暮れの魔法を打ち払う方法はちゃんとあって
子供たちならみんなそれを知っている。
今日も足を引きずりため息をつく大人の前を、
子供たちが影踏みをしながら歓声をあげて駆けていった。
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仕事や生活に追われ多忙や煩わしさを引きずって、ただ歩くのも
もどかしい私たち大人は
いつのまにか帰り道に影踏みや石蹴りをしなくなって
暗がりと不安に取り込まれていたのかもしれないとふと思った。
でも、無心に軽やかに駆けていく子供たちの姿を見ると、
人が大人の時代の役割として暗がりや煩憂と戦うのもまた
意味のあることかもしれないとも思えてくる。
