シンプルな幸せ | 酒とホラの日々。

シンプルな幸せ

日々、会社の仕事や世間のこと、家の雑事に追われ、

なかなか気の休まるヒマもないばかりか、

いったい何がしたいのか自分自身の優先順位がわからなくなるときに

読む本がある。

   独楽吟

独楽吟 橘曙覧(たちばなのあけみ)/ グラフ社


江戸末期の歌集だが、実はこの本、単純に安くてすぐ読めそうだからという
理由だけで買ったのだが、その後私の大切な本の一冊になった。
本も人も出合いはワカランもんである。


この歌集、すべての歌が「たのしみは」で始まっている。


たとえば、


 たのしみは 妻子(めこ)むつまじく うちつどい
    頭(かしら)ならべて 物を食うとき


     訳や解説は不要であろう。

   

   また、


 たのしみは まれに魚煮て 児等(こら)が皆
    うましうましと いひて食うとき


 橘曙覧は貧乏暮らしである。殿様の出仕の誘いも断って文学の道で
精進していた。貧乏暮らしの厳しい中、家族仲良く無心に食べることの
うれしさ・楽しさというのはこの上ない喜びだったのだろう。
その喜びは、衣食住におわれるという意味の貧しさとは無縁な現代の私たちにも
とてもよくわかる。


社会的・物質的環境が如何に変わっていようと、人の心のありようとは
変わらないものなのだ。


だから、こんな昔の歌にも私たちは共感し、感動することができる。

時代が変わっても人の心とは変わらないなら、

幸せのヒントもまた変わらずここにあるといえる。


  たのしみは 紙をひろげて とる筆の
     思いのほかに よく書けしとき


これは文字のことを言っているのかもしれないが、文字でも文でも物を書く人なら
思いがけずいいできにかけた時のうれしさというのは、わかることでしょう?

それはブログを書いても同じことではないですか?


その意味で文学とは、事件や現象ではなく人間と人間の心を書き留めるものなのでしょうね。