自転車泥棒にご用心!
日ごろデスクワークや会議の多い私は、休日は車に乗るのを避けて、極力自転車で移動することにしている。またせっかちな私は、歩道橋や階段道も迂回せず自転車を担いで上り下りするのが常だが、これには時折奇異なものを見るような視線を感じることがある。
だが、自分のできないことを人がやることを理解できない人間というのは、どこにでもいるものなので気にしない。
ある日いつものように、近隣の住宅地を抜けた長い階段道を愛用のマウンテンバイクを肩に担いで駆け上っていると、なにやら後ろで人の呼ぶ声がした。 ちらと振り返ると、階段の下、少し離れたところで年寄がこちらを指差して何か言っている。 足を止めてさらに見ると、他にも二人三人と人が増えてこちらを見ている。
なんだろう、この先行き止まりなのかな、危ない道だったかな、それとも何かポケットから落としてしまったのだろうか、と思い、階段の途中で向きを変えて降りていくと、年寄たちは驚いたようにわめき声を上げて逃げていくではないか。 私も驚いて振り返って階段道を見上げたがなんだかわからない。 とにかくここは離れたほうが良いような気がしたので、すぐに自転車に跨り年寄たちの行った方に走っていったが、年寄たちはまだなにやらわめいて走っているのだった。
いったいあれは何だったのだろう、妙なこともあるものだと思いつつ家に帰ると、町内の自治会の緊急連絡網が回ってきた。
連絡内容は、
「つい先ほど隣の町内で、黒いジャージにサングラスの怪しい男が
自転車を盗んで逃げるところをお年寄に見咎められ、
逆にお年寄を自転車で追い掛け回すという事件がありました。
しかも男はまだ行方がわからないので十分に注意してください」
というものだった。
その日の夕方、急造の自警団よろしく自治会の町内パトロールがあって、
数人ずつでチームを組んで私も出かけた。
道々、今日の事件の話になった。
「怖いですねー、犯人は自転車を担いで逃げるところを見つけられたので逆上して向ってきたというじゃないですか」
「すごい形相で、大きな刃物も持っていたそうですよ!」
「お年よりは、こいつ殺してやる!、と言われたそうですね」
「・・・・・」
以来私は自転車に乗るときもいつも通りきちんとした服装で出かけている。
自転車用のジャージなんてとんでもない、ただこのほうが自転車を降りても携帯した上着を羽織れば、人と会うのも、おしゃれなレストランに入るのも全く差しさわりがないので楽だからだ。
この自転車の町乗りスタイルはぜひ他の人にもお勧めしたい。
・・なお、あの凶悪な自転車泥棒はまだ捕まっていない。
変装して逃げているのだろうか。実に物騒な、とんでもない世の中になったものだ。。。
(ホントハーフ)