雑草記
春も浅いある晩のこと、家の軒下に男の子と女の子が震えて立っていた。聞けば、住んでいた土地を追われ、行くところもないのだという。
私は彼らを家に招きいれて、泊まっていくように言い名前を聞いたのだが、追われた土地に名前も捨ててきたので、新しい名前が見つかるまではどこにもとどまることができず、行く先々でまた追われて、こうしてあてどなくさまよい歩くしかないのだというのだった。
それなら私が新しい名前をつけてあげるよ、というと彼らは喜んだ。
その晩、寝入ってから夢の中で新しい名前が浮かんだ。
だが朝になって、さっそく彼らに名前を告げに行くと、部屋には彼らの姿がなく、慌てて外に飛び出した庭に、昨日まではなかった草が朝日を浴びて立っていた。
・・・そして春が過ぎて梅雨時を前にして、庭では点々と連なる可憐な白い花と小さな赤い実がかぜに揺られてニコニコと笑っている。
白い花の名前は雪片草(ゆきひらそう)、
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・・・なんだって、ただのどくだみとヘビイチゴだろうって?
だって、こいつら名前で大損してるような気がして、、、
うちじゃ、こう呼ぶんだよ、私だけだけど。ハハハハハ。。。