雨の日の海岸に立って眺める空の色と海の色は・・・
「海が見たいの・・・」
彼女(B女)の急な一言で、時折小雨降る空の下、
電車で海へ出かけることになった。
霧のような雨に煙る海岸は、海も空も乳白を帯びて境があいまいで
けだるい空気がそこにあるものすべてを支配する。
実は私もこんな眺めは嫌いではない。
まとわりつくような霧雨には、傘もあまり役に立たず
結局早々に散策を切り上げた私たちは海岸のレストランに入って食事を
することになったのだが、他に客もまばらでこの日海岸一帯が
ほとんど貸しきり状態だった。
まだ昼だったが、飲んだ、当然、たらふく。
このために、ぐずるB女を恫喝して車を打ち捨てて
電車で移動して来たのだ。そうでなければ誰が海になど来るものか。
運転手のいない車などブタにでも食われてしまえ。
さて、有名シェフの経営するそのレストランは、
関連会社で地ビールやワインの醸造も手がけ、
野菜も契約農園から取り寄せるという凝りようで
おしゃれで当世風のポリシーが受けて雑誌にも何度も取り上げられて
結構繁盛しているらしい。
人気店かどうかはあまり関心がないが、良い酒がふんだんに注がれる
グラスの上に話が弾むのはなによりのこと。
散々飲んで引き上げるときに再び海を見たのだが、
すでに濁った重たいだけの色はつまらないものだったし
打ち上げられたゴミばかりが目に付くのだった。
海の色は移りにけりないたずらに我ら深酒あおりせし間に・・
と、口走った自分の戯言のつまらなさにさらに興ざめする。
さらに小野小町さんごめんなさいと口走って、吐きそうになる。
だから海なんてイヤだと言ったんだよ、と私は毒づいて
酔っ払って面倒になったのでタクシーを拾って帰ってきたのだった。
飲んでリラックスできる場所があればどこだっていいのさ。