雪中花 | 酒とホラの日々。

雪中花

ある晩のこと、
思いがけない女性から何年ぶりかのメールが届いた。

メールには
彼女の住む町では桜が咲くと同時に雪が降ったので、
雪見酒と花見酒を同時に楽しんでいるというようなことが
あっけらかんと書かれていた。

忙しさに自分を追い立てるような毎日をすごしていた私だけれど、
不意のメールに一時緊張が緩んで

どこか遠くの光景が目に浮かんだのだが、それは
薄く雪に覆われたピンクの花が浮かぶ闇


その晩の酒は雪見花見酒の代わりに

細かい氷を入れたグラスにウォッカを満たして
塩漬けされた桜の花を浮かべてみた。


桜酒


しばらく眺めて冷たいグラスに口を付けると
華やいだ桜の香りが広がると同時に
アルコールと塩辛い小さな刺激が唇を刺したのだが

私は季節がいつの間にかまた春になっていたことを知り、
今は友達となった彼女との長い距離を思った。


酔わない晩もあれば、酔えない晩もまた、ある。