長い夜 | 酒とホラの日々。

長い夜

拙者、大人になってもだいぶ長いこと、
「胆力」とは腹の力のことだと思っていた。
そんな私の理解によれば、これは表層的な腹筋の力でなくて、
もっと奥深いところの力のことで、
生理的には排便のための筋肉のことではないかと思っていたのである。

また同じようにやはり、「踏ん切り」「糞切り」だと思い込んでいたから、
長くて切れの悪い便を、「胆力」をもってうん、っと断ち切ることが
「糞切りをつける」ことだとずっと思っていたのである。

ここから『物事をケツ断する度胸のことを「胆力」という』のだと
一人で理解納得していたのだが、
最終的に「胆力」の意味のとらえかたに間違いはなかったようだ。

それにどちらも学校のテストに登場するような言葉ではないから、
社会生活に問題を生じることはなかったのである。

こんな私もやがて認識が誤っていることに気がつくことになったが、
そのきっかけもまた誤認識だった。

長くつしたのピッピ
『長ぐつしたのピッピ』という児童文学があるが、私は読まなかったのだが、有名なのでタイトルくらいは知っていて、なぜ長靴の下に女の子がいるのか大変不思議だった。


それが長い靴下(オーバーニーソックスというのか?)をはいた女の子だったという事実を聞かされ、この「長い」のつながりで長い糞を断ち切るという下品な言い回しもひょっとしたら、と確認し、私は長い暗愚のトンネルを抜けたのである。メデタシメデタシ、


もちろん私は私の蒙を払ってくれた女性に心から感謝したのだが
カノジョはこの顛末をてんで信じてはくれなかったのである。

・・・この話、児童文学の紹介ブックに載せたら怒られるだろうな。