バニラ男と恋愛の破片
N氏の一日はバニラとともにある。
部屋にはバニラのルームフレグランスはかかさない。
バニラの香りのポプリもあちこちに置いてある。
お茶もバニラフレーバーの紅茶の上、
風呂はいつもバニラのバスオイルだし、
ボディーソープもシャンプーもバニラ系のものを揃える念の入りようだ。
別にN氏がバニラが好きだというわけではなく、
振った元カノがバニラが大の苦手だった、という理由による。
なんでもこれがもの凄い執念深い女で、警察にストーカーの
被害届け出そうかと本気で悩んだほどの相手らしい。
家にも会社にも正体不明の電話がかかってくるなどは序の口。
朝の出勤時にいるはずのない駅で立っている、
夜のコンビニに見たことのある人影がある、
身に覚えのない約束事を追求した超長文の手紙が届く・・・。
このところ近くには気配がなくなったものの、
元カノ、自称霊感の強いオカルトマニアだった事から、
N氏曰く、どうもいろいろと仕掛けてきているらしいのである。
いろいろって何のことなのか、私にはわからないが、
N氏の挙動を見ていると、どうやら生き霊が飛んできて
良からぬことをする事を恐れているようである。
そこで、バニラ漬けの毎日となるわけなのだが、
何のことはない、ドラキュラ除けのニンニクと変わりはない。
それでも今もって続けているところをみると、なにがしか効果は
あるのだろう。
いやはや、男の恋愛譚って、振るにしても振られるにしても
なんで格好悪いものにしかならないものなのか。
それはまあ相手は特殊な(?)女なのだろうけれど。