チュウハイです。
さて、今年の締めは盛り沢山でお送りします。
サウンドホールに手を突っ込んでの作業は終了。
箱にした直後
現在
元々のバック
例によって箱にした直後と今とでは殆ど違いが無いようですが、全然違います。
よりギターらしいところにフォーカスした箱になってます。
今までと違う観点からも見てみます。
「上手く作られているアコギは、アタックから減衰終了まで約1秒」と語る高名なルシアーがいるので、1秒に合わせ込んでみました。
手持ちのやり過ぎた手工ギターでは、2秒近く。
いつものスペクトルの話。
まず、200Hz帯。
ラダー間に周波数の異なる200Hz帯の共振が3つ存在してました。
この中で最も振幅が出るのが黄色の領域です。
初期状態は253Hzでした。
上から3番目のラダーを削ることで、振幅を上げつつ周波数を235Hzに。
これもたかだか18Hzの周波数変化。
でも意図した木工で実現するのは実に大変でした。
次に、どうにかして持ち上げたかった450Hz。
(前回記事の画像)
最後まで持ちあがらんかった。書き足したくらい劇的な振幅が欲しい。
既にバックはかなりレスポンシブな状態と言えますし、これ以上の振幅は出せません。
ならば、トップから450Hzを含む振動エネルギーを出して、バックに入力すればいい。
トップ・バック双方に450Hz付近の共振点を設定し、「トップとバックの共振・連動」でより大きな振幅を得る。
そういう仕組みが働くように作るのが正解ですな(確信)。
てことは、今作の更なる改善にはトップのトーンバーの操作が必要。
ここの調整で、トップにも450Hz付近の共振を設定出来ます(それも結構難しいんだけど)。
そうすれば450Hzがガッツリ増幅されます。
ようやく分かった。
(これが間違いなら、私がハイエンドギター並みのモノを作ることは不可能)
「450Hz付近」がアコギのチューニングにおいて最も難しいところ。
トップだけバックだけではどうにもならないし、狙って、かなり正確に、トップとバックを連動させないといけない。
連動が上手くいってるハイエンドは、こう。
連動がない私のだと、こう。
分かってみれば、アコギの基本的な仕組みの話なのでした。
大きな振幅を出すには、単体部材ではなく部材間の共振や連動が必要。
そういうこと!
では、拘る「450Hz」がアコギにおいてどういうものなのか。
フレットポジションと周波数の関係をまとめるとこんな感じです。
450Hzは1弦の5、6F付近の音です。
ここでピンと来た方は、経験豊富かつ耳がよろしい。
アコギの1弦5、6F付近は、音が後ろに引っ込んでしまい「鳴っていない」状態になりがち。
そこそこの金額のアコギでも、1弦5Fの音が前後ポジションよりも細くて後ろに行ってしまうことがよくあります。
「楽器としての弱点」になりがちなのよね。
アコギって、フツーにテキトーに作ってもトップ・バックの共振位置が300~420Hzあたりに分布します。フツーなら。
分かって無くても、それらしく作れば1弦0~4Fあたりはそれらしく鳴るのです(経験談)。
しかし、多くの場合で前述したような450Hz付近のトップ・バック連動がない。
そこまでの理解と手間をかけて作られていない。
結果、こんな感じの共振分布になるんですね。
1弦0~4Fあたりにトップ共振が集中。
これだと0~4Fがやたらと鳴り、5~6Fが全然鳴らず、トーンや鳴り感の差が大きいです。
特にソロギだと、よく使う5Fあたりがだけが細く、レスポンスが悪くなるのでとてもストレスを感じます。
てのが、今作のスペクトルにも出てるわけだ…分かってない人が作ったやつ。
対して、連動が上手くいってるアコギではこんな感じに共振が分布します。
これなら、0~6F間の鳴り感やトーンにバラつきがあまり出ないですし、5Fの引っ込みも回避できます。
で、こういうスペクトルになります。
チューニングに成功している、と言えるのはこういうアコギ。
1弦を満遍なく上手く鳴らせているか否か、でアコギの成否は決まる。
音色的な好みとは別の、楽器の基本機能の問題として、ね。
と言っても、そこが耳で分かる人はあまりいなそうだけど。
今回行ったバックのチューニング作業は成功と言っていいでしょう。
ギターとしてはあと一歩!
というところまで作れました。
ハイエンドとは言わないまでもその下くらい(多分ね)。
というところで、ではまた来年。