チュウハイです。

 

 

年始の挨拶は飽き飽きしてるでしょうから省略致しますよ。

 

 

今年の初投稿からヘビーで読み応えの有り過ぎる記事でございます。

 

 

アコギでは、主にトップ振動から発した空気の振動を受けてバックが振動します。

 

 

 

今回は、この仕組みの中で「バックを鳴らす量」に適正な範囲があるのでは?

 

という話。

 

 

 

まず、バックがとても良く鳴るアコギを想定してみます。

 

バックが良く鳴る=バック振動が大きい

 

そういうアコギでは何が起こるでしょうか。

 

 

 

端的に、弦やトップの振動がバックに吸われてしまう。

 

そんなようなことが起こると考えられます。

 

 

バックが大きく振動するギターでは、振動エネルギーの多くがバックからギター外に放出されます(極端な話)。

 

 

 

そうすると、箱の内部に保持されるエネルギーが減り、サウンドホールから出力されるエネルギーが減ってしまいます。

 

つまり、ギターの前方には細く弱い音が出力される、ということです。

 

箱が良く鳴り、弾き手が気持ちの良いアコギが遠鳴りしないと言われるのは、主にこれが原因でしょう。

 

 

聴衆はギターの前にいるし、マイクもギターの前に立てますからね。

 

アコギは本来、サウンドホールからギター前方に向けて多くのエネルギーを放出すべき楽器なのですよね。

 

 

 

だから、バックは特に鳴らし過ぎちゃイカン場所になります。

 

 

私の作品は、図示したほどではないにせよ、バックが鳴り過ぎてます。
 
録音するとよく分かるんだ。

 

 

 
で、バック鳴り過ぎ問題は、もう少し実際的で分かりやすい問題も引き起こします。
 
トーンやバランスがアコギらしくなくなるのね。
 
 
目で確認出来るところを載せましょう。
 
私の作品の特性です。

 

 
 
200Hz帯に、そこそこ大きな2つのピークが有ります。
 
これらは、トップの振動を受けて発生するバックの共振。
 
フツーのアコギには、こんなに大きなバック共振が2つもないんです。
 
 
つまり、バックが余計に鳴っていて、「アコギ」として不自然な音色を作ってしまっている状態です。
 
現実的には3弦がやたら大きく鳴って1・2弦の邪魔をするし、低音弦の音が軽くなる、といった現象でそれが確認出来ます。
 
 
 
じゃあ、バックの鳴りを抑えてみましょう。
 
段階的に仮ブレースを両面テープで貼り付けます。
 
 

 
 

 

はい、2本貼り付けの時点で200Hz帯の2つ山が消えました。

 

 
 
まあ、正確に言うと消えたわけじゃなく。
 
ブレースで200Hz帯の共振周波数を下げつつ振幅を小さくしました(鳴りを抑えた)。
 
結果として、↓の3つの山が1つにまとまって見える状態になってるんですねぇ。
 
 
 
仮バックブレースを入れた方が、まだアコギらしい鳴り方になったのです。
 
 
そういうわけでバックが鳴り過ぎていればトーンやバランスがおかしくなる。
 
そして、ブレース(剛性設計)でそれを解決出来ることが分かりました。
 
 
 
とはいえ、ここまでバック振動を抑え込むと、今度は恐らく「やり過ぎ」なのです。
 
 
ブレース貼り付け前後を並べて俯瞰してみましょう。
 
 
 
囲ったところ(500Hz~3kHz付近)は、仮ブレースが2本あることで、かなり大きくなっているように見えます。
 

ですが、そこが「大きくなった」と解釈するのは間違い。

 
2本のバックブレースにより400Hz帯以下の鳴りが小さくなった。
 
その結果、500Hz以上が「大きくなったように見えている」のが正解です。
 
 

 

バック共振(200Hz帯)以外の周波数が何故影響を受けているのか。

 

 
よく振動するバックは、アコギとして重要な400Hz帯以下を強く増幅する機能を持つのです。
 
 
 
それゆえ、ブレースでバックの振動を抑えこむと、バック自体の共振だけでなく、バックが持つ低周波帯の増幅機能も抑え込むわけですね。
 
過度なバックブレースをすると、全体的に音の重さが損なわれる、ペラペラとして軽く安っぽい音になる、ということです。
 
そうなってしまうと、やり過ぎなのです。

 

 

 

ということで、バックは鳴り過ぎても鳴らな過ぎてもギターの音がおかしくなるのですね。
 
 
じゃあ、おかしくない音にするには、
 
①適度にバック共振を抑える程度に強く
②低周波の増幅機能が働く程度に弱く
 

これらを両立させるようにバックの剛性を作る必要がある、と言えます。

 

 

トップもそうだけど、結局は「適度」であることが「適正」なんですよね。

 

なんとなく作れば大体は「過度で不適正」になってしまう(経験談)。

 
 
 

では、さらに。

 

今回の仮ブレースで「適度」を狙う場合どうするか。

 

 

 

 

まず、バックの共振周波数の位置は今くらいでよいです。

 

低周波の増幅機能はもう少し引き出したいです。

 
 
てことなら、やはりこう削る。
 
 
 
中心寄りを削ると共振周波数が一気に上がるので削れません。
 
端(ノード)を削って弱くすることで、バックの振動性を上げ、増幅機能を持たすことが出来ます。
 
これが解決策。
 

 

まあ、結果としては歴史的にフツーの削り方なんですけどね。
 
まあ、そういうもんす。
 
 
さーて、この実験結果を受けて、どう作業すっかね。本番をやる予定は有りません。。。
 
 
 
それにしても、トップと比べりゃバックは「全然鳴らさないでいい」感じがします。
 
その癖にバック材ってやたら高価なんだよな…変なの。
 
 

 

 
では。