馬五郎はほおずき長屋と呼ばれる裏店の嫌われ者である。最近では臆面もなく若い娘を引っぱり込むような傍若無人な振る舞いに出る馬五郎に、裏店の住人は触らぬ神に祟りなしと決め込んでいる。
昔から乱暴者だったわけではない。女房と別れた67年前からである。夫婦の娘が、女房の目を離したすきに川に落ちて死んでしまったのである。
女房と別れ、馬五郎はお角という女を気に入っていた。最近ではお角が一緒に暮らしても良いといっている。だが、馬五郎にお金があるのを分かると、お角は金を持って逃げた。