憧れの大手出版社に入った間宮緑が研修を終えて受け取った辞令は、<「季刊落語」編集部勤務を命ず>。座布団に座って面白い噺をしては客を笑わせる、あの落語・・・? その場で辞表を書こうかと世を儚みかけたが、せっかく入ったのにもったいない、どうにか気を取り直した。年四回発行の落語専門誌「季刊落語」の編集部は総員二名。唯一の上司兼相棒はこの道三十年の編集長、牧大路。二と二を足して五にも十にもしてしまう人並み外れた洞察力の主である。牧の手にかかると、寄席を巻き込んだお家騒動、山荘の摩訶不思議、潰え去る喫茶店の顛末・・・。 "落ち"が見えない様々な事件が、信じがたい飛躍を見せて着地する。時に掛け合いを演じながら、牧の辿る筋道を必死に追いかける緑。そして今日も、落語漬けの一日が始まる――。