市役所勤めのサユリは、地味で平凡な自分へのコンプレックスからか、生まれ育った長崎をポルトガルのリスボンであるかのような妄想にふけることも日常茶飯事で、愛読する少女漫画に登場する王子様を理想に掲げ、現実の恋愛になんぞ興味なしを装っている。しかし、心の中では大学時代の憧れの先輩・聡史のことが忘れられずいるのだった。クリスマスまで後1ヶ月に迫ったある日、サユリは路面電車の中で思いがけず聡と再会する。

長崎とリスボンは似ている。確かに。歴史的にも縁の深い2つの街は、恋愛映画の舞台としてこの上なく豊かな表情を見せてくれる。芥川賞作家・吉田修一の小説「724日通り」を村上正典監督、金子ありさ脚本の『電車男』コンビで映画化した本作。ヒロインも同じく中谷美紀だが、今回、彼女は高嶺の花ではなく、極々目立たない道端の花という設定だ。自分なんかどうせ、と諦めばかりが先行してしまうサユリが一念発起、変身を試みるという筋書きだが、要は現実逃避に走ることなく、自分のことも相手のこともほんとうの姿を見るべしということ。女たちよ、現実にも目を向けよ。こんな世の中だってまんざら捨てたものでもないのだ。