"鉄腕を衣の手袋で包め"という訓えのとおり、彼らは今朝もまた、神田橋の国税局庁舎を出ると、目指すサンカメラ日本橋本社に向けて出発した。サンカメラ社長・山上を脱税容疑で取り調べるためである。彼らは、山上がすでに出社したという情報を得ていた。中には、二号宅で痴話喧嘩でもした結果の早朝出社だろうという者もいた。山上は、女子社員の淹れたお茶を啜りながら、ともすれば昨夜来の礼子との情事のために居眠りさえしそうなほど疲れていた。そんな矢先、人相のよくない男たちがノックもせずに彼の部屋に入り込んできたのである。彼は一瞬強盗に襲われたと思った。しかし、彼らが手にした手帖には金箔のマークがついていた。彼の心臓は瞬時のうちに凍りついてしまった。調査は進められ、彼の自宅にまで手が伸びた。妻の和服の間や子供部屋まで、容赦ない調査は続く。そして、やっと当局の追及を逃れた彼は、一冊の極秘手帖がどこにも見あたらないのを知った――。