有効な地球温暖化対策として植物からつくられるバイオ燃料が世界的に注目を集め、エタノール原料となるトウモロコシなどの価格が上昇、「燃料」のため「食糧」がしわ寄せを受けている。このため、英国系の国際石油資本、BPは、食用に適さない茎などの部分からバイオ燃料をつくりやすくする遺伝子組み換え技術を研究する計画だ。日本でも国産バイオ燃料生産を目指した遺伝子組み換え技術開発を進める検討会を設置するなどの動きが目立ち始めた。
温暖化対策の切り札としてブッシュ米大統領は車のガソリン消費を10年間で2割削減する方針を打ち出した。欧州連合(EU)も2020年までに輸送用燃料の2割をバイオ燃料に転換することで決定。こうした流れを受けトウモロコシ価格が昨年から上昇し、前年比1・5~2倍にはね上がった。メキシコではトウモロコシを原料とするトルティーヤの値上がりで大規模デモが起きた。国連食糧農業機関(FAO)は昨年12月、バイオ燃料の穀物需要増で貧しい発展途上国の食糧事情が悪化するとの懸念を表明した。
このため、トウモロコシの茎などを利用したバイオ燃料作りの試みが行われている。茎は食用に適さないため食糧事情を逼迫しない。しかし、茎は主に繊維質でできており、従来のエタノール製造より糖に分解するまで手間がかかりコスト高になる。
こうした問題点を解消しようと、米エネルギー省は植物繊維系バイオ燃料開発に3億8500万ドルの助成金支出を決めた。
BPは米化学大手で遺伝子組み換え技術で定評のあるデュポンと手を組み、カリフォルニア大バークリー校に10年間で5億ドルを投資し、植物繊維系バイオ燃料開発研究所の設立に乗り出す。ミシガン州立大は繊維質を糖に分解する酵素を作る遺伝子を最初からトウモロコシに組み込む研究を行っている。
消費者団体の反対などで試験栽培も難しい日本も今月、バイオ燃料などの遺伝子組み換え技術開発を審議する検討会を設置した。緒明俊・油糧輸出入協議会事務局長は「バイオ燃料で食糧を圧迫しないように植物繊維を利用したバイオ燃料開発は急務だ。燃料も食糧も輸入に頼らなければならない日本でも重視すべき課題となる」と話している。
■温暖化+食糧危機解決へ 環境負荷を考慮“革命”必要
「人類は穀物を燃料に使うか、食糧に使うかを争う時代に入った」。世界の食糧問題の第一人者である米環境シンクタンク「アースポリシー研究所」所長、レスター・ブラウン氏は都内で産経新聞のインタビューに応じ、こう警告を発した。
「地球温暖化対策としても、世界の穀物市場を牽引する米国の早急なバイオ燃料導入は、トウモロコシの価格高騰だけではなく、他の食糧にも波及し、貧困層の食糧を奪ってしまう。燃料対食糧の争いの最大の問題点は国連のような仲介者がいないことだ。猶予期間が必要だ」と、ブラウン氏は指摘した。
米国で建設中のものを含めると、バイオエタノールを製造する商用プラントは約200カ所に及ぶが、茎や雑草などを使う植物繊維系の商用プラントは6カ所が計画中にすぎないという。
ブラウン氏は「食糧問題にならない植物繊維系のバイオ燃料製造に力を入れるべきだ」と提案。植物繊維系のバイオ燃料の生産コストは今のところ高くつくが、遺伝子組み換え技術で低く抑える試みについて言及。「地球温暖化と食糧危機を解決するため、環境負荷を考慮にいれた“革命”が必要だ」と訴えた。