隠れた銃が今度は警察官を撃ち、容疑者の家族を襲った。17日の愛知県長久手町の拳銃発砲・立てこもり事件は、先月の長崎市長射殺、東京都町田市の暴力団員立てこもりという拳銃事件を受け、政府が銃器犯罪の根絶に向け協議を開始した矢先に発生し、警察庁に大きな衝撃を与えた。同庁も取り締まり強化を全国の警察本部に通達したばかりだが、国内で5万丁が違法に保管されているとの推計の一方で、その実態は年々見えにくくなっている。愛知の事件は、潜んだ拳銃に一般国民が危険にさらされている現実をいやがおうでも痛感させる。
「異常事態としか言いようがない。警察一丸となって、銃器取り締まりを強力に進めている中で本当に残念だ」。愛知の事件の発生を受け、警察庁の中堅幹部は17日夕、深刻な表情で語った。
昨年1~4月で13件だった発砲事件。警察庁によると、今年同期は28件と倍以上の増加。死者、負傷者も今年1~4月はそれぞれ4人と、昨年同期の死者1人、負傷者2人を上回っている。
こうした現状に加え、社会を揺るがした先月の長崎、町田両事件を受け、政府は先月25日に銃器対策推進本部(本部長・塩崎恭久官房長官)を開催し、銃器犯罪の根絶に向けて協議を開始。警察庁も先月20日、銃器や暴力団への取り締まりの徹底を全国の警察本部に通達している。
警察庁通達は、「武器庫」と呼ばれる3丁以上のまとまった摘発に力点を置き、暴力団の組織幹部や「準構成員」と呼ばれる周辺者への情報収集を強化するよう指示。拳銃を使う側である暴力団に対しても情報収集を徹底し、組織上部に迫る捜査を求めている。
だが掛け声とは裏腹に押収量は減少を続け、潜在拳銃の実像は見えにくくなる一途だ。平成9年に1225丁だった押収量は減り続け、昨年は458丁。押収減少に歯止めがかからない理由として、暴力団対策法への暴力団の過剰な対策があるとみられている。一線の捜査員は「隠匿がどんどん巧妙になっている。銃器・弾丸の所持と、発砲などの厳罰化がなされ、暴対法によって銃器捜査を突破口に組織壊滅される危機感が暴力団の側にある。それを恐れて、組織内で銃器情報に触れる幹部を一握りに絞っており、情報が警察に漏れない」と証言する。
押収量の減少とは裏腹に、水面下での拳銃の流通・蓄積量は増加の一途とみられる。警察当局は「暴力団1人に拳銃1丁」が実態とみており、「国内に潜む拳銃の実数は5万丁程度」との説が半ば常識化している。
押収量減少に歯止めがかからない現実は、潜在拳銃の脅威の高まりを物語っているといえ、今回の愛知事件はまさに“氷山の一角”。一般国民の犠牲を出す前に、実効性ある一手が政府単位で求められている。