FE(基本情報技術者)、そろそろ再開しなきゃ、と始めたら、けっこうやることある。

あと一カ月半で、大丈夫なんでしょうか…

大丈夫かな。

大丈夫さ。

基本はできてるもん、たぶん。




うちの犬、普段遠吠えすることはあまりないのですが、「た~けやーーーーさおだけーーー~~~~」はなかなかツボみたいです。

至近距離で犬のおちょぼ口を見て、爆笑してしまいました。
爆笑して、ビデオにうまく撮れませんでした。


代わりに、華麗なカスタネット演奏をお楽しみください。




私が真似して「たあけや~」と歌ったら、心配そうな顔で口をべろべろしてきました。

遠吠え。

ウケル。






黄ばんだ空間に岩谷の横顔が出現する。

なんでもない、見慣れた顔のはずなのに、このスケッチブックに描くと妙におどろおどろしい感じになってしまった。
その投げ出したような視線が、紙の淵を越えて、僕の部屋をけだるげに品評しているように見える。

こんなの、岩谷じゃない。

慌てて消しゴムを探したけれど見つからないので、砕けた欠片を使ってチマチマ白紙に戻した。


その日は昼食を済ませた後、コバが来ることになっていた。
卒業式が終わり、他の学年はまだ学校に通っている、春休みとも呼べない変な期間を僕は過ごしていた。

絵を描いていることを、さり気なく教えようと思っている。
まだ誰にも見せていない自分の作品に感想を与えるのがコバだと思うと、僕の繊細な心臓も落ちついて脈拍を刻むことができる。

コバの好物のハッピーターンを一袋、うまい棒のコーンポタージュ味を10本用意して、ときどきハッピーターンをつまみながらコバの来訪を待ち受けた。


時間どおりに来たコバは、うまい棒で作ったピラミッドに律儀にツッコミを入れてくれた。

「サービス精神旺盛だろ?」
僕が言うと、
「ハッピーターンはどうせもともとうちにあったんだろ。ありがたくちょうだいしますが」
そう言って、次々と包みを開けた。

卒業式の日に盛り上がった、同窓会の幹事をやるなら誰それだという話をぶり返したあと、僕はスケッチブックをコバに渡した。

「卒業してから暇で暇で、こんな趣味始めちゃったよ」

コバは一瞬ためらった素振りを見せてから、スケッチブックを受け取って表紙をめくった。
僕はその表情をこっそりうかがっていた。

ページをめくるごとに、目の周りの日に焼けた肌が引きのばされていく。
濃い眉が一部前髪に隠れる。

「これ、お前の…?」

「うん、全部」

コバが素直に驚いているので、僕は胸のあたりがもぞもぞするような、照れくさい気持ちになって、座っていた椅子を回転させた。

「すげえな。てゆーかさ、美術の成績よかったっけ?特に賞もらったこともないよな」

「まあな。凡才の教師が生徒の隠れた才能に気付かなかったってことよ」

「うわ、調子に乗ってーし」

コバは笑い顔がフィルム映画みたいに流れる。
手で勉強机を掴んで、椅子を止めた。

コバはスケッチブックに目を戻す。

「でもマジ、すげーよ。なんか、ただの消しゴムとか林檎なのに、見てると吸い込まれるかんじ。それほどリアルじゃないけど、色が付いているみたいな錯覚があって……」

本当に、コバは目が紙と見えない糸で繋がっているんじゃないかというくらいに、しつこく紙を眺めまわした。

「分かった。今度一枚描いてやるよ、コバの肖像画」

「まじで?」
コバが期待顔を見せる。

「家宝にしろよ。その代り一枚10万で売ってやる」

「きたねー」

僕は素早くコバの手からスケッチブックを奪い取って、二人共読んでいる漫画の新刊の発売日を訊いた。


コバは美術が得意なほうだ。中学に上がってからはよく知らないけれど、小学生のとき県の絵のコンクールで入賞して、表彰されていたのを覚えている。

それに、コバは負けず嫌いだ。
自分の得意分野で自分より秀でているヤツに内心嫉妬することを、そこそこ長い付き合いから僕は知っていて、そのことを今の今まで都合よく忘れていた。

本当はもっと絵について話したかったのに、話を逸らしたのは、そういうコバの、ああいう反応は、少し不気味に感じられたからだ。



(つづく)



電車のドアに10分もたれて、目的の駅で降りて自宅から一番近い画材店に向かった。

もっとごちゃごちゃしたイメージを漠然と抱いていたけれど、整然としていて通路の幅も狭くなく、袖を商品にひっかけてペコペコ頭を下げるような事態にはならなそうだった。

白い口髭を生やした宮崎駿みたいなおじさんが奥にひとりいて、いかにも「町の画材屋さん」という感じだ。

絵の具が壁の一面を占領してずらりと並ぶさまは迫力がある。
石膏像が高いところからガラス越しにこちらを見下ろし、その下には名前も用途も知らないモノが棚を埋め尽くしていた。

やはり芸術の道具を扱うということで、商品の展示方法にもこだわっているのだろうか。

余計な音楽がなくて客が少なくて、また来たくなる雰囲気だ。
自分の町の文具店にも通じるが、こちらにいるほうがなんとなく自尊心をくすぐられた。誰か知り合いが偶然店の前を通りかかって、僕を見かけてくれればいいのに。

僕は筆がにょきにょき生えた棚の前で、高そうな一本を手にとって矯めつ眇めつした。
もちろん買うつもりなんてない。

それどころか、持っている先の割れた筆の代わりになる筆さえ買うつもりがない。

結局、この前の誕生日プレゼントの件はあやふやなまま、父の魚の目か母のセルライトか何かの話に移行した。
望みが叶うか、自分の500円玉貯金を崩すことになるか分からない。
でも、我が家はイベントを大事にするほうだし、なんだかんだ僕は両親から愛されていると思うので、希望的にその日を待っている。

つまり今日は、下見というところだ。

キャンバスはどれがいいんだろう。
というか、キャンバスって何だろう。

きっとそんな無知っぷりが顔に表れていたんだろう。
いつの間にか白髭のおじさんが近くにいて、話しかけてきた。
目尻が下がった、優しそうな人だ。

「何を描くおつもりですか?」

「えっ…と…」

まだ題材は決めていない。
キャンバスに描くのだから、チャチなものは描きたくない。
家がちょっとした坂の上にあるので、ベランダから見える町の景色は候補のうちだ。

「景色を描くつもりです」

「油絵?」

そういう質問だったのか、と内心合点しながら、僕は首を捻った。

「まだ決めてないんです」

おじさんは少し困ったように一度キャンバス群に視線をやる。

「たぶん、油絵を描きます」

僕はいい加減に言った。
いや、実際、すでに持っている道具を活かそうと思ったら、中学に入ってからの付き合いの油絵の具のほうが良い状態なのだから、理にかなっているはずだ。

おじさんは油絵用のキャンバスを案内してくれた。

Fというサイズがよく使われるらしい。
他にも、屋外で描くなら折りたたみできるイーゼルが便利だとか、初心者に有難い簡単な説明を受けて、僕はちょっぴり後ろめたい気持ちで「また来ます。今日はお金ないんで」と言い置いて店を出た。






(つづくんだどこまでも)



暖かいとね。

$つづり、ときどきボーダーコリー

$つづり、ときどきボーダーコリー


オセロみたいだね。




最初の作品には、筆箱をひっくり返して、分裂した消しゴムのうち最も大きな塊を採用した。
青、白、黒の三色ケースもちゃんと残っている。

小学校の硬筆展で使って以来、ずっとペン立てで埃を被っていた2Bの鉛筆を指にはさみ、位置を調整した消しゴムをスケッチブックに写し取っていく。
影の部分は指で擦ってぼかし、ゴムの丸くなったところは別の消しゴムでしっかり消して、明暗を表現する。

機械的に手が動く。
美術室で近くの席のやつとくっちゃべりながら、片手間に描いていたときはと違う。


十分ほどで顔を上げた。

昼食にラーメンを食べて30分と経っていないのに、激しい空腹を覚えた。
ひとまず、机の下の教科書などを積み重ねてあるところからポテトチップスの袋を引っ張り出して、黙々と食べた。

人心地ついたので、洗面所に手を洗いに立ち、水道水を少し飲んでから部屋に戻った。

椅子に着き、消しカスを息で吹き飛ばし、スケッチブックを掲げた。

無駄な線はない。

色がない分、本物そっくりとまではいかないが、犬や色盲症の人は一瞬だまされるかもしれない立体感だ。

黄ばんだ紙というのが、ダ・ヴィンチの人体図みたいに歴史的に貴重な印象を与える。

僕は満ち足りた気持ちで、スケッチブックを引き出しに戻した。


その日から、毎日手近なものをスケッチするようになった。

毎回製作時間は長くて20分だったが、それでも必ずクタクタになった。
そのせいで、題材はせいぜい、玄関に飾ってあるエッフェル塔の置物、キッチンからかっぱらってきた林檎や姉の部屋から拝借してきた手鏡だった。

絵を描いていることを、家族には隠している。
スケッチブックを勝手に使っている後ろめたさもあったし、絵を、それもなかなかイケてる絵を
描いているなんて知られるのはむずがゆい。

でも、次第に描くことに慣れてくると、色づけをしたい、大きなキャンバスを使いたい、という欲求が頭をもたげるようになった。

中学で使ってきた油彩絵の具は残り半分くらいだった。
それも色によってまちまちで、好きな景色を描く授業で画用紙のほとんどを空で埋め尽くしたときに消費した青と白はほとんどない。
水彩絵の具については、どの色も乾燥してチューブの出口をがちがちに固めている始末だった。

ある晩、姉が照れの裏返しだろう、ムスッとした顔をして誕生日のお祝いケーキを食べながら、来週の僕の誕生日について言い及んだときは、考える間もなく父と母の前で言葉が口をついて出た。

「もう大輔はプレゼントなしでしょ?高校入ったらバイトできるもんね」

「画材、欲しいんだけど」


(つづく)