昨年から、音楽制作に関することで出来ることは何でも仕事として受けています。

具体的には、作曲、編曲、レコーディングディレクション、Mix 、Masteringなどですね。

顧客の年齢層も10代から60代までと様々。ベースアレンジだけ、ギターアレンジだけ、シンセパートだけ、なども承っています。たぶん、ポップスの範疇ならある程度はどれでも対応出来ます。
しかし、音楽を巡る様々な環境が変化する中、収入が安定するところまではまだまだです。

 

その傍ら、弾き語りのライブにも頻度は少ないながら出演。
そして、今年5月からはスケジュールの合い間を縫って、チップチューンの習作を始めました。誰かに聴かせるためというよりは、自分の作編曲のトレーニングが主目的です。

 

チップチューンは、8bitの初代ファミコンを想定する場合、同時発音数を4個までという縛りがあります。ノイズ音を用いてパーカッションにする場合、調性音に使えるのは3音になります。

この縛りが、効果的な和声を作る精度を上げ、とかく音数が多くなりがちな僕のアレンジの無駄を解消する訓練になると考えたからです。

 

現在、4作目まで作ったので、振り返りたいと思います。

 

習作No.1 : 「窓の外は風そよぐ草の丘」 (2026.5.1)

手探りで作り始めたチップチューンです。

WindowsXPのデスクトップ画面をイメージした曲です。
この時はまだノイズをパーカッション的に使えることを知らなかったので、調性音に4声を用いています。
さらに、チップチューンに矩形波以外を使えることを知らなかったので、すべて矩形波を用いています。

習作No.1のピアノ版

チップチューン版と全く同じアレンジのピアノ版です。
五線譜を表示していますが、こちらを先に作っているのです。最近は曲をDAW上でなく、まず五線譜で主要パートを作ることが増えています。なので、チップチューン習作を行うに当たっては、すべてまず五線譜で作っています。
大譜表の五線譜にすると音使いを視覚的に捉えやすくなりますね。
勿論、僕は鍵盤を弾けないので、打ち込みです。記譜ソフトからMIDIエクスポートしたデータをDAWに取り込み、各声部を4トラックに振り分けています。習作ということで時間を節約するために、ベロシティや音価の調整は行っていません。
 

習作No.2: 「魔王の側近が魔王よりつよい件」(2026.5.17)

2作目は、RPGのバトルBGMをイメージしました。ダークな中ボス戦といったところでしょうか。

これもまだ4声ですね。このときは、ベースラインに三角波を使い始めました。それ以外は矩形波で、8bitチップチューンで矩形波のビブラートやduty(デューティ比)のパラメータを変えられることを知らなかったので、同じ矩形波3声+三角波1声という構成です。

習作No.2: ピアノ版

楽譜付きピアノ版です。冒頭のアルペジオ風パッセージは、16分音符の5連符と6連符を交互に使うことで、チップチューンならではの容赦ないスピード感とリズムを出しました。というのが、譜面を見ると分かりますね。


チップチューンでは、音域を実際のピアノほどは広く使えないので、限られた音域内でオープンボイシングを使うなどしています。言うのを忘れていましたが、一応物理的に演奏可能なように、右手と左手のパートそれぞれで和音のインターバルを1オクターブ以内にすることをチップチューン習作すべての方針としています。実際に弾けるかは分かりませんが。

 

習作No.3: 「朝、ペダルを踏んで」 (2026.6.25)

朝の自転車通学をイメージして作りました。

ここからはレトロゲームやコンピュータ的なものから離れて自由にテーマ設定をしようと考えました。

そしてこのとき、上部3声をビブラートとdutyを変えた矩形波、下部1声(ベース)を三角波という、ようやく実際の初代ファミコンと同じように音色を使い分けることを覚えました(苦笑)。

そして、ノイズ音をパーカッション的に使うことも覚えたため、調性音として使えるのは3声となり、よりシビアになりました。
また、MIDIデータをビジュアライズするソフトを導入しましたが、背景が真っ黒なのは、まだ背景画像を入れられることを知らなかったからです。

 

習作No.3: ピアノ版

譜面付きピアノ版です。

今見ると、譜割りを修正したい箇所などありますが、まあ習作ということで。


同時発音数3つに絞るという制約の中で、ボイシングを工夫しています。僕はピアノを弾けないので、コードを考えるときは最初はギターを弾くのです。それがシンガーソングライターとして染み付いているからで、そうなるとギター的なボイシング、テンションノート、ジャズ的なコードなどが出て来ます。それらをバッサリ捨てるのは勿体ないので、例えば、IVmM7のコード感を旋律もある中で3音で表現するには?など五線譜上で工夫を凝らすことになります。

 

こういった一つ一つのアプローチが、絶対に後々大いに複利的に役に立つと信じて取り組むことにしました。また、信じられる手応えを僅かに感じ始めたのも、このときです。

 

習作No.4: 「銀翼、空に舞う」 (2026.7.18)

飛行機乗りの冒険飛行をイメージしました。
これも調性音は3声のみです。
連続同音と3連符を多用することで小型プロペラ機(レシプロエンジン)の飛行を表現、直線的な雰囲気を出すために少しですが幾つか連続5度も使っています。

穏やかな飛行、乱気流、荒天、加減速のあるアクロバティックな飛行など、それぞれのパートに具体的なイメージを持って作りました。

習作No.4: ピアノ版

譜面付きピアノ版です。
今見返すと、同じキーの中でシャープとフラットの表記が小節によって異なる箇所が少しあって、不味いなと(汗)。おそらく元々のコードネームの表記を引きずってしまったためだと思われます(反省)。
今見ると、直したい箇所が多少ありますが、このときの足跡ということで。

理論的な要素は大切ですが、曲想と旋律のモチーフを明確に持つことの方が優先されるべきとも思います。単に音を重ねたり並べたりするのではなく、何をイメージして表現しているのかということです。今のところ、そこだけは外さずに習作を重ねられていると思います。

 

この曲を作っているときぐらいから、藝大和声のテキストを入手して勉強し始めました。全然歯が立たないかと思いきや、理路整然としていて意外と分かりやすく、少しずつ進めています。ネットで繋がっている藝大出身オケ作曲家の先生から進め方について若干アドバイスをいただき、まずは行けるところまで行ってみようというところです。

 

さて、まだしばらくチップチューンを作って行きます。次の曲はもう骨子は出来ています。ここへ来て作る速度が上がって来ているので、合計10曲ぐらいは作る予定でいます。
 

キリの良いところでまた振り返りたいと思います。

「ボカコレ2025夏」への参加に合わせて、ボカロ曲を投稿しました。

 

YouTube

 

ニコニコ動画

 

80年代前半ぐらいまでのシティポップを意識した楽曲とアレンジなのですが、歌詞はネタなので、まあ、ネタ曲の部類に入ります。

制作時間は、正味で1週間ぐらいでしょうか。とにかくタイトなスケジュールの合い間を縫って何とか作りました。(寝る時間が……)

 

 

■キャラ設定と楽曲コンセプトについて

 

タイトルに「feat.大人KIRITAN」と入れましたが、「東北きりたん」という元のキャラは、公式設定では11歳なのです。僕はボカロ曲では好んできりたんをよく使うのですが、今回の制作にあたって、偶然、大人の声に加工する方法を編み出しまして。そこから、大人声のきりたん、つまり25歳に成長したきりたんを主人公とする曲を作ろうという設定を思いついたのでした。

 

公式設定の11歳のきりたんは、ゲーム好きの引きこもりとのことで、オタクで生意気なところのある子供なのかなと想像します。そのイメージのきりたんが都会に出て大人になったらどんな感じかなという着想を出発点にして、曲のコンセプトを考えました。

 

そこからジャンルはレトロなシティポップ、夜の街を一人で飲み歩く或る意味で逞しくしたたかな女性、というイメージが出て来ました。まあ、実際に僕がバーなどで出会う20代女性との会話などからインスパイアされたイメージもモチーフになっています。

 

さて、きりたんの大人声ですが、元々の11歳のきりたんの声を知らない人にとってはピンと来ないだろうと思い、11歳のきりたんも登場させ、子供の声と大人の声を対比させてみることにしました。

 

 

■歌詞について

 

さらに、せっかくなので、11歳のきりたんが歌うパートの歌詞は、少し雰囲気をぶち壊すようなネタにしてみることにしました。「黒塗りの高級車」というワードは有名なネットミームからの引用です。

 

曲のタイトルになった「Old Fasioned」は、曲を最後まで聴くと具体的に何のことなのかが分かるようになっていますが、そこに至るまでに別の意味も込めていて、マルチミーニング的になっています。

 

いずれにせよ、歌詞の内容は、特に意義深さを意図してはおらず、都市で夜遊びする女性の軽やかさのようなものが主題になっています。もちろん、どんなにチャラチャラしたような人にも影はあるもので、また、メタ認知的に自己像を抱いていたりもすると思います。そういった要素も入れてあります。

そこは竹内まりやさんの「プラスティックラブ」へのオマージュと言うとおこがましいですが、その歌詞の精神性は参考にしました。

 

 

■音楽的要素について

 

今回はレトロなシティポップということで、コード進行に関してはまあ、得意なことをやりました。

B♭メジャーキーで、細かいコードチェンジのある箇所を少なめにして、BPM110で16ビートを基本的なリズムとしています。

 

普通はサビに使うようなコード進行をイントロやBメロ頭に持って来て、サビはトニックから最近のJ-POPの常套句的な進行に少しリズムの変化を付けた形に展開しました。ゆえに全体のコード進行としてはリッチな構成になったのではと思います。

Aメロは、ツーファイブワンのヴァリエーションからC#メジャーキーへの部分転調を挟んで、復調してブラックアダーコードからVIm7に着地、Bメロ頭のサブドミナントへ繋いでいます。

比較的シンプルにしたつもりですが、こう書くとややこしく見えますね……(汗)。

 

間奏パートは2箇所、1つ目はトランペットソロ(得意のマウス入力打ち込みw)が入りますが、ベースとギターカッティングを同期させるバックトラックも聴き所だと思っています。弾くのが大変だったので(苦笑)。2つ目は純粋にブラスのアンサンブルでエモさを出したつもりです。

 

ブランスアンサンブルについては、主に高音域を担当させることを念頭に置きつつ、1コードで1小節を引っ張るような箇所でも、ボイシングを変えることで変化を付けてあります。

また、対旋律を部分的に使うことで和声を調整しています。

 

全体のパート構成としては、とてもシンプルです。

ドラム、ベース、ギターカッティング、ブラスセクション、エレピのみです。もう少し現代的にするなら、シンセシーケンスやシンセパッドを入れるなどしても良いのですが、今回は余計な音は入れず、レトロな生バンド感を重視しました。

 

「恋した人なんて~」のパートは、落ちサビ兼大サビで、僕があまりやらなかったことですが、構成上のアクセントを付ける意図で今回は作ってみました。

このパートの歌詞に「切れたアーニーボールそのままにして」とありますが、アーニーボールはギター弦のメーカー名です(笑)。リスナーが知らなくても自分の解釈で何となく雰囲気を感じ取るような箇所を作りたいと思いまして。

 

もう少しいろいろ追い込みたい要素もあったのですが、制作案件の合い間で時間を確保するのが難しく、省エネのシンプルな構成で行こうという方針を採りました。

 

Mixについてですが、これもあまり凝ったことはしていなくて、ブラスセクションは意図的にチープな音像にして、重くならないようにしています。

ブラスを左に、ギターを右に、というパンニングは、シュガーベイブやキリンジへのオマージュです。これも潔く振った方が無駄にゴージャスにならなくて良いという判断です。

 

他にも部分的に、往年のシティポップの名曲へのオマージュがあったりもしますが、微妙な要素なので、何となく感じていただければと思います。

 

 

■動画について

 

最後に、動画についてですが、今回はいつもキャラの立ち絵をお願いしている浜渡浩満氏に、大人きりたんの立ち絵を描き下ろしていただきました。急なお願いにも関わらず描いていただき、感謝します。

 

子供きりたんも登場させて、アホ毛(頭頂部の毛の束)だけが画面下でチョロチョロ動いているというネタ要素も入れてあります。

 

背景の夜景は、ほとんど大阪市内の夜景です。僕が住む建物が写っているものもありますが、綺羅星の如く瞬くビル群に紛れています。

 

 

■まとめ

 

この記事は、主に何を考えて作っていたかを書き留める備忘録的な意味合いが強いのですが、皆様に少しでも何か面白味を感じていただく一助にもなれば幸いです。

 

「ボカコレ2025冬」の最終日(今日)の朝と言う、勝つ気があるとは到底思えないタイミングで新曲を投稿しました。

 

「連絡帳はペンで書くのだ! / feat.KIRITAN」

 

 

アレンジとミックスは手前味噌もいい所なのですが、コード進行と歌メロはしっかり作り込んだつもりです。

久々の新曲と書きましたが、自作品を発表していないだけで、ほとんど毎日音楽制作をしています。

今年に入ってから40人以上の音楽人と会ってますし、成果はともかく、細切れの小規模案件を受けたり営業活動したり、多忙と言わざるを得ない日々を送っています。(稼ぎがそれなりになる地点まではまだ遥か遠いですが)

春以降は舞台の劇伴の話が来ていて、今年の前半はそれが僕にとって大きな山場になりそうです。

 

一方で、ボカコレへの参加だけはしておきたいと思いつつ、趣味の楽曲を作る時間が取れず、結局2徹して何とか最終日(今日)に出せたというところです。

アレンジはもっと練りたいし、音色ももっと作り込みたいし、ミックスも特にキックとスネアをもう少し何とかしたい……等等、やり残した要素は数知れずなのですが、最低限でまとめて出しました。

テクノポップとしては、もう少し違うイメージを持っているのですが、寄せきれず、直す暇もなく。

 

タイトルと歌詞に至っては特に深い意味は無いです。

ポップで可愛くてちょっと面白い、ぐらいのイメージで出てきた言葉を並べて繋いでいます。まず最初にきりたんが小学生のキャラなので、小学校から連想して「連絡帳」というワードが浮かびました。最初はタイトルを「連絡帳」としていましたが、もう少し面白くひねりたいと思っているうちに、「ペンで書くのだ」という子供っぽい言い回しを思いついたので、そこに繋げる歌詞を書いて行ったという感じです。

 

一見無邪気な曲ですが、音楽的には全く無邪気ではないです。和声をこれでもかと練ってBPM170のテンポに詰め込んでいます。自分の作品なので好き放題しようということですが、今回のボカコレの参加者の皆さんの曲を幾つか聴くと、もっと余裕があって伸び伸びと楽しんで作ったようなものが多く、このカルチャーは良い意味でアマチュアの世界なんだなぁと改めて思いました。

同時に、僕がもうプロ寄りの方に来てしまっていることにも自覚させられたというか……稼げてないですが。

 

例えば、最近の案件では、トラックメイカーさんの楽曲のエレキギターRECのみを行うというものがありました。これを仕事として請け負うと、ギタートラックを作るだけで日数を要しますし、きっちり仕上げるためにかなりのエネルギーを注ぎ込みます。

また、ボーカリストさんの歌のRECをディレクションしたりもしています。これは録った後のピッチとタイミングの修正も込みなので、しっかりしたボーカルトラックデータを作り込む作業になります。

 

このクオリティに対する感覚で、趣味のボカロ曲を作ろうとすると、大変なことになります。本当はここはこうすべき、と思う幾つもの要素に目を瞑って、粗いなぁと思いながら進むことになるんです。じっくり作る時間が無いからです。

 

今回の「連絡帳はペンで書くのだ!」は、ループ素材をたぶん一つも使ってないと思います。ほぼ全て自前(打ち込み)です。途中で、ループ素材を使う方が音像を整えやすくてよいのではと思いましたが、後戻りしている時間が勿体ないので、そのまま突っ走りました。

結局、粗いところが多いのですが、和声上の問題はほぼ解決しているのではと思います。意図的に表現として不協和でまとめる箇所もありますが、出来るだけ選択のジャッジはしています。

 

そんな感じのこの頃ですが、今年は長期的な視点に立って、とにかく小さなことからでもキャリアを積み上げることと、人と沢山会うことに注力して行きます。