人間とは欲深い生き物だ。
欲望には際限がない。どれだけのものを手に入れても欲望が満たされることはない。
きっと、地球上の人間を全て支配したとしても、今度は人間以外の動物とか魚とかも支配下に置こうとするだろう。最後には宇宙に進出していくのだ。
これは生物としての本能なのだから仕方がない。強いものが生き残るために必要に迫られて身に着けた感情なのだから・・・
「本当に、仕方ない・・・」
僕は腕をぐいぐい引っ張られるのに抗いながら呟いた。
「パパー!これ買って!ねえ買って!」
息子が毎度のごとく叫びながらおもちゃをねだってくる。今日は子供に人気の戦隊物のフィギュアだった。つい先日もほしいほしいと喚いたためミニカーを買ってあげたばかりだ。
これは生まれつきの本能だ。生物としての本能だ。どうしようもない。
だが、このままでは僕はいつか人間の支配権を買い与えなくてはいけなくなってしまうだろう。そんなことはできないし、息子に買ってあげたくもない。
僕は腕を引っ張り頑として動かない息子に向き合った。
「この前もミニカーを買ったばかりだろう?今日は我慢しなさい」
「もう飽きちゃった。ねえこれ買ってよ!けんと君も持ってるからほしいんだよ」
「むぅ・・・」
もう飽きてしまったとは。我が息子ながらあまりに飽きっぽい。
誰に似てしまったのか?・・・確実に僕なのがつらい。
そしてどうやら仲良しのけんと君が持っているからお揃いのものが欲しいらしい。その気持ちはわかる、痛いほどわかるぞ!友達と同じゲームを持ってないと仲間に入れてもらえないやつだよな!僕はポケモンを買ってもらえなくて輪に入れなかったんだ・・・。
息子にまでそんな思いはさせまい。
僕は意を決して、少ない小遣いから紙幣を取り出した。
「わかったよ。でもこれでしばらくおもちゃは買わないからね?」
「うん!パパありがとう!」
息子が満面の笑みで腰に抱き着いてくる。
これは誰に似たのか?確実に妻だ。僕はこの手法であっさりと落とされていた。
息子の頭をポンポン叩きつつレジを探して辺りを見渡す。すると、
「こら!パパ買っちゃダメでしょ!ほら戻して!帰るわよ!」
妻が棚の影から姿を現したと思った瞬間、僕の手にあったフィギュアは元の場所に戻され、抱き着いていた息子は引き剥がされていた。
「ママぁ!パパが買ってくれるって言ったの!買ってくれるって!」
「いけません!家にどれだけおもちゃがあると思ってるの!我慢しなさい!」
「やだー!やだー!パパぁ!」
息子の阿鼻叫喚があっという間に遠のいていく。
僕は棚に戻されたフィギュアを眺めた。
「息子よ・・・お前も僕と同じ運命を辿るのだな・・・」
せめて仲間外れにされなきゃいいが。
そんなことを思いながら2人の後を追った。
