俺は薄暗い地下室にいた。照明はほとんど消えており、スマホの明かりがやたら眩しく感じられる。

入口の扉は厚く、音が外に漏れることはない。ここなら爆薬を鳴らしても外の人は気が付かないだろう。いくつも取り付けられたスピーカーからは会話ができる程度の音量でBGMが流れていた。

周囲では名も知らぬ人たちがプラスチックのカップに入った酒を煽りながら静かにザワついている。皆やや興奮した様子で語り合っている。

 

ふいに、BGMが止んだ。

ザワつきがさーっと引いていく。

皆の視線が前方の一段高くなったステージへ向けられた。

 

カッ、カッ、カッ

スティックを打ち鳴らす乾いた音から全てが始まった。

 

ギターの流れるようなアルペジオ。

キーボードのメロディが語りかける。

ベースの低音が空間を包み込む。

鼓動がドラムのリズムに同期していく。

そして、澄んだ歌声が加わったとき、地下室は観衆の熱狂で燃え上がった。

 

声を上げ、腕を挙げ、体を跳ね上げる。

曲が進むにつれてライブハウスはヒートアップする一方だ。

 

日の光の届かない場所で、世界中のどこよりも明るく照らし出されるステージ。
俺はそれをこっち側から見上げている。

 

だが、本当は俺はあっち側から見下ろしたい。

光り輝くステージに立ちたい。

暗闇で蠢く大衆で満足なんてできない。

誰だってそうだろう?

『いや、私はそういうの興味ないから』

笑わせる。

人気者になりたい。周りから認められたい。

そういう感情は自然だし、それがなければ成長なんてできない。

 

俺はいつか絶対にあっち側に立ってやる。

だから今はしっかりと目に焼き付けておくんだ。

ステージの光と観衆の熱気を。

心に灯すんだ。

聖火のように決して消えることのない炎を。

 

 

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