Imitation silver | HWD+e

Imitation silver

 今の今まで知らなかった人も多いと思うのにもかかわらず、突然世界ヘヴィー級選手権と銘打ち、田中と永田の間で、かつてニック・ボックウィンクルが巻いていたものと同じデザインのベルトが、賭けられたりする。TVすらしっかり観られていない御時世、何の説明もなく、「世界ヘヴィー級選手権」とくる。誰もがスポ紙や雑誌を読んでいると、なぜ確信するのか。大体紙誌の記者になどすら、どこまで何が分かっているのか。我々にどう騒いで欲しいというのか。


 まず、この、AWAとロゴの入った“世界ヘヴィー級”ベルトだが、ゼロワンのサイトで調べてみても、あまり詳しく分からない。同じデザインのベルトはデール・ギャグニーのところにもあり、リッキー・ランデルなどが頑張っている。ところがここでもあまりよく分からない。つまり本人達にもよく分からないのだな、ということしか分からない。


 大森が、AWAスーパースターズのチャンプだったというのは知っているし、それのつながりだろうというのは何となく分かるが、世界とは、やれやれ何事か。


 かつてはNWAタイトルをも利用していたあそこらへんの一派、今度はAWAで、次はどこか。AWASSのタイトルを分裂させてまで世界を薄めて、NJまでが乗っかったりする。これでは世界中のレスラー全員が世界チャンプになりかねないではないか。


 かつてボックウィンクルの腰に輝いていたAWAベルトについては、かつてここで言ったことを緩めるつもりはない。現在のデール・ガニアことデール・ギャグニーのAWAは、90年代中頃に、ケン・パテラなどが中心となって、ミネソタで細々と始めた、旧AWA圏の人たちの懐古趣味を満たそうとしたAWASSが母体だ。ヴァーン・ガニアのAWAとは一時の時期的断絶もあり、名前が似ているだけの全くの別組織だ。デールはヴァーンのカズンでも何でもない。田中のタイトルを深夜に突然見た日本のファンには、そもそもそこまで関係もない。


 ここでも、名王者ボックウィンクルのベルトと、デザインが同じだということが、ミソになって来ている。意匠問題の管理というアトーニーマターだが、しかしよく考えれば、あのデザインのベルトはハンセンのところに放り置かれて終わったはず。WCWに降ったズビスコが巻いていたベルトは、あのビッグシルヴァーではなかった。ベルト的にも、完全に断絶はある。PWF会長を担いだ方がまだ、辻褄出来るというものだ。こういう名王者の威光と歴史に乗っかろうという手法は、NWAともども、品がいいとは言い辛い。


 NWAが世界タイトルを保持し続けたいという食いしばりは分かるにせよ、AWAまでが、鞭を打つ必要性はあるか。デールの個人的な欲以外に。分裂USタイトルの雄だったAWAタイトルは公的タイトルの一面を持つから、個人的な思惑とは相容れにくいとも感じる。ましてや日本に分裂して何の意味があろう。分裂USタイトルの雄だったアメリカンアソシエーションの、しかもイミテイトタイトルが。


 ゼロワン周辺は、ジャレット以前、NWAタイトルを支えた経緯がある。ともすればキャンディード以降をあの周辺が支えたから、TNAがあるとも強弁出来る。しかし、フレアーやボックウィンクルが巻いていたものと同じものだと、かつて鶴田を観齧ったことのある日本のファンを騙そうとするかのような振る舞いは、やはり間違っている。


 NWAのVPの一人だったGババ。にもかかわらずAWAチャンプのブッキングを許された、数少ないプロモーター。だからAJには、レイスもボックウィンクルも訪れた。AWAは、NBAがヤラれた独占禁止法の適用を回避するために、実質的にはNWAが自ら作ったオポジションだから、本来は敵対が大原則だった。日本は海外の島国だからと大目に見られ、それに乗じてレイスもニックも楽しんでは来た。92年のチョーノの理屈も基本的には同じだと言える。マスカラスのEMLLやIWAのタイトル戦、カネックで有名なUWAタイトル戦もやり、ボックのWWUタイトルやロビンソンのCWAタイトル、アダニスのイミテイションゴールドにも触れてきた。時にはKVEのミズーリ州タイトル戦やオレゴンのPNWタイトル戦まで、この極東の島国で開催して来た。タイトルの理事的麻痺の深刻は、だから世界チャンプが何人いてもいいと刷り込んでも来ている。しかし本来はそれは、オカシイと感じなければいけなかったことなのだ。


 ただ、レイスもニックも本物だった。暫定王者とはいえ蝶野も。本物が居て、の基本線は譲られなかった。それがバティスタもHHHも来ない段になって、世界チャンプが何人いてもいいということだけ憶えている振りは、さすがに都合が良すぎる。


 エキスポなるショーで、国技館借りて一割を埋められなかったという。わずか一週前にNJが渾身して、なぜすぐ同じ会場が、パブもろくに無いコンセプト不明のショーに埋まると考えるのだろう。それは果たして、そうであるわけがないボックウィンクルのベルトを、そうであるかのように振舞い流されてしまう感性と、大きく関係していないと言えるのだろうか。




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