Frankenstein
昔このリングで使っていたことのある技が、咄嗟に出たと王者武藤。誰にでも言えないヘヴィーウェイトなセリフなので、取り上げる人も多いだろう。こんな形で経験の重さを語られては、若者のペラいナルシズムなど聞いてもらえないだろうなぁ、と。むしろあれで中邑が勝って、ヘボい言葉にでも酔われていたらゾッとする、と。「昔このリングで使っていたことのある技」、スコット・スタイナーのウルトラC。使うべき場面で然るべくように使うと、あのウルトラCは流石に今でも、フィニッシュに映える。
今でもスタイナーの技を決めに使っているのは・・・見ているような見ていないような・・・。よく聞く雪崩式フランケンシュタイナーとかいう技は、フランケンシュタインを造る際の、稲妻の電気ショックに相当するパルスかどうか。
ターンバックルの上に座っている相手の首に飛びついて、急角度のサンセットフリップのようなものを仕掛けるのは、人造人間を造る衝撃に当たるか。リッキー・マーテルのウラカンラナはスゴかったけれど、化け物装置とまでは呼ばれなかったはずだ。それがいつの間にか、フランケンもウラカンもジャンピングヘッドシザースホイップも、全部フランケンシュタイナー・・・。味気なさは、自らが古舘になれる機会すら葬っていることに気が付かないか。
ロープワークから走り向かってくる相手を、ドロップキックの要領でヘッドシザースを仕掛け、前方へのFを止めるどころか押し返し、更に再び前方へ捻り倒して足を取り、そのまま片エビに固めるのがフランケンだ。早送りが突然巻き戻されるような変調のライトパニックが、この技の魅力の全てといってもいい。死体を継ぎ接ぎしてヒトガタを仕上げ、最後にワイルドシングが一発この技を仕掛けたら、ドンガラガッシャーンと、博士の怪物は動き出さねばならないのだ。ヘッドシザースホイップで生命が宿るかというのだ。
本当に咄嗟に出たのかもしれない。その突然さが、王者のフランケンをフランケンらしく仕上げていた。王者のコメントを、迫力あるものに響かせてもいた。それに突然応えた中邑もまた、やるなということにもはなるが、クロスアームバーをシグネチュアに選んだ中邑は、こういうダイノな純レスリング文化にあの古い柔道技で、どう対抗していくのかなとは、いらぬお世話でもあるまい。
シャイニングウィザードも含め、憶えきれないような様々なオリジナル技を繰り出す、特に昨今の日本。しかしどれもネーミングには凝っているものの、フランケンシュタイナーの、パォーマンスとしての力の技巧には遠く及ばない。GTSやコードブレイカーなど、拝借されるパォーマンスすら、なかなか上級な技とは分類しにくい。一時はウィザード一辺倒に頼っているようにも見えた統一王者、咄嗟にフランケンが使えるまで調子が戻っているのは、嬉しい限りか。
何年か振りで見たやもしれない、本家ブーティダディもあまりしなくなっている、まともなフランケンシュタイナーでのフィニッシュ。新鮮だったというか、たまに出すタイミングのその突然振りの演出もまた、ニクかりしか。
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