Brainbuster!
トレヴァー・マードックのお腹が、へこんですっきりして来ている。ギミックとしてアレを維持するのは、むしろ大変なのかもしれない。
トレヴァー・マードックの原型はもちろん、往年の名レスラー、ディック・マードック。運動神経抜群のナチュラルで、ほとんど才能だけで全てをこなしているかのように見えた、天才型のスーパーマン。
ウェイトトレーニングも何もない。お腹はビア樽、腕もサイも太くない。しかしおそろしく見事なドロップキックを見せ、カーフブランディングではするするとトップターンバックルへ駆け上がる身軽さを持ち、膝をしなやかに折り曲げてのブレーンバスタードロップは、誰も真似の出来ない究極技巧を誇った。そしてあの、ハイジャンプ競技のような軽やかなステップを踏んでの、ジャンピング・エルボードロップ。アウトローズの相棒ダスティはとうの昔に使えなくなった、フレアーですら、滅多なことでは使わなくなったジャンピング・エルボードロップを、マードックはいとも簡単に、普段着のようにいつまでも使ってみせた。
揉み上げを伸ばし、映画の解説をし、噛みタバコを垂らし、歌など歌ってみせるトレヴァー。プロシャンバックブレイカーは、ダイヴィングブルドッグで代用できないこともない。器用だし、存在にはなるほどユニークさはある。しかし“マードック”足るなら、ドロップキック、カーフブランディング、ブレーンバスタードロップ、ジャンピング・エルボードロップは必須。更に言えば鼻っ柱へのパンチと、エルボースタッブの使い方。それなしに容貌と雰囲気だけなぞっても、限界は来る。ランス・ケードに先行を許しそうだという。
マードックこそは、レスリングの実力を魅せるレスラー。前歯も無く、酒癖も悪いキャプテンレッドネックが、NWAチャンプ候補に挙がるなど、突出したレスリングの実力なくしてありえないこと。それだけで候補に挙がったのだから、マードックの実力が如何にこのビジネスの上位に捨て難かったかが分かろうというもの。PT風味のサンセットフリップもいいが、マードックをやらすなら、ビア樽でのフライングドロップキック、雄叫びのブレーンバスター、そしてハイジャンピング・エルボードロップは、これは欠かせない。これは絶対にマスターさせないとならない。
ともすれば個性の薄くなったWWEマット。空いていたキャプテンレッドネックの椅子は座りにくいが、欲されていることも事実。そしてビア樽ドロップキック、ブレーンバスター、ジャンピング・エルボードロップも、きっと今でもまた、エクスプロッシヴなパフォーマンスに違いない。少なくとも我々はまた、あの、ヴァーティカルスープレックスではない、膝を横に折りたたんでのクラフトを、渇望している。70年代のレスラーが出来たことを、現代のアスリートが出来ないというのも、本来はオカシなハナシなのだ。
あれはカール・コックスから続く、残虐の雅。ヴィシャシズムの美学。ぐずりと引き崩り落ちるようなブレーンバスターと、よく見るヴァーティカルスープレックスは全く違う技だ。時に見る、膝を畳まないパイルドライヴ型は下品でもあり、だ。
SDに移るマードック。タイトル構成も決まってしまったようだが、本来的にはICで長期政権を与えたいタイプ。マードックの代名詞はノースアメリカン・タイトルだった。どうせヤルなら、拝借するのも徹底的に、だ。ビア樽ドロップキック、カーフブランディング、ブレーンバスター、エルボースタッブ、鼻へのパンチ、そしてジャンピング・エルボードロップとともに、あのキャプテンレッドネックよ現代に完全に蘇れ。かつてのマードックファンなら、それをきっと陽気に、歓迎してくれる。
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