Playboy made | HWD+e

Playboy made

 グレート・ムタが1・4で、後藤と一戦。その前にハッスルででも、究極のスペシャルギミックアトラクション。未だ色んな場面で頼られている“カブキの息子”だが、ということはボノちゃんは、カブキの孫なんだろうか。ダラスからアトランタを経て生き続ける不朽の名ギミック。カブキがいたからムタがいたというのは分かるが、これは・・・次代、大丈夫なんでしょうね。


 ムタは言うまでもなく、米国産のプロダクトだ。89年、フロリダやプエルトリコで暴れていたホワイトニンジャは、WCW発足と同時にアトランタに召集される。呼んだのは、WCWの新チーフブッカー、リック・フレアー。フレアーはカブキのマネージャーだったゲーリー・ハートとともに、白忍者をムタとしてリボーンさせる。ムタを誕生させたのは、アメリカ人のフレアーとゲーリー・ハートだったということは、くれぐれも忘れたくはない。


 この年、89年、ダスティ・ローズに代わって、初めてチーフブッカーに座ったフレアーは、世界ベルトとチーフブッカーの座を独占。WCWで半独裁を始め、そのチーフブッカーとしての最初の仕事として取り組んだのが、ムタとフライング・ブライアンのブックだったと言われている。そして、盟友O・アンダーソンが帰って来て、半年程でそのポストを降りたフレアーにとって、ムタは最大のヒット作だったとも。フレアーのファンにとっては、ムタは、ブッカー・フレアーの、最高傑作という側面がある。あれはフレアーが造ったものだと。


 勿論武藤敬司という、稀有な運動神経の持ち主ありき、なのではあるが、しかしあれは、アメリカ人が創ったからこそ、微妙な、いい意味での、奇妙な果実っ振りが奏でられたのだと、そう思っている。そしてだからこそ、我々には手に負えないのだとも。


 日本でのムタは、武藤敬司との両立という矛盾のもと、魔界とか何とかの装飾を講じられているが、オリジナルのムタは、ただの忍者である。アメリカ人が考える、ただの忍者。我々日本人こそ忘れがちであるが、忍者とは何も、神秘的な存在でも何でもなく、つい300年前には、確実に居た、我々と同じただの人間である。アメリカ人が考える忍者の方が実はシンプルで、彼らは忍者を忍びの者、つまりスパイマスターとしてきちんと理解し、極東の戦国時代の、鍛え上げられた特殊工作員だと、正しく認識している。だから、米国産のオリジナルムタは、至極シンプルだ。だから御愛嬌としての奇妙な果実も効く。


 NJの、特に大きなショーでのムタ政策で、賛成したものはひとつもない。日に日に派手になる、忍びの者の衣装。ラメとスパンコールで目立つ忍びが居るか? ある時は忍者ショーを組み込まれ、ある時は箱に入れられマジックの題材にされ、ある時は肩に作り物の蛇を乗せられた。マーケティング部にいいように玩ばれる、存在しないはずの、秘密工作を任務とするエージェント。或いはそれが魔界の妖怪だったとしても。ギミックが寄る幹も、ゲーリー・ハートの意思もどこ吹く風。ケロの前口上など何とかの骨頂。武藤の運動神経だけで成り立っているような日本のムタは、リング上のファイト以外は、何時もキビしかった。


 日本のムタは、言わば忍者ではなく、妖怪か物の怪の類。そう見れば受け入れられるのだろうし、今やゴテゴテしていなければ成立もしないのだろう。米国産オリジナルムタが忍者だったことすら、知られていないのかもしれない。


 実はオリジナルムタのストーリーも、WCWでは未完。ストーリー途中で、ムタは日本で武藤として生きることを選ぶ。だからムタは日本では、生きているのに死んでいる、黄泉からの妖怪にされてしまい、その暴走的生命活動の挙句に、今やボノまでくっつけられたりしている。


 本来的な忍者は、実は多種多様。特殊工作をする実行犯は下忍で、上忍はすっかり、忍法身替りの術で、中枢の権力者に成り代っていたりもしたと、言われてもいる。下忍の一部は、街角で幕府の執政を揶揄する漫才師を、世を忍ぶ仮の姿にしていたとも。そう言えば最近、日本マット界には“忍者”が異様に多く、今更ムタが忍者である必要は、ないのかもしれないが。


 しかし、フレアーがプロデュースした、作・ゲーリー・ハートの、そもそもがアメリカ産のダイナミズムが、カブキから続く、アンダーテイカー・クラスの傑作ギミック、本来的なムタの命。ハッスルでもAJでも武藤本人でもいいが、奔放ばかりやる前に、一回ぐらいは、オヤジの産みの親である著作権者?ゲーリー・ハートの意見を聞いてみるのも一考、ではないのだろうか。