アメージング・メモリアルズ
今年はかのモントリオールスクリュージョブから、テンイヤーアニヴァーサリーを刻むという。タイトルを防衛した上で、それを置いて行くつもりだったというカナダ人ヒットマン。それをはさせなかったVKM。このレスリング史上最も壮絶な騙し合いについては、今年はいい機会、我々もひとつ、その内に、口をはさまさせてもらうつもりだ。
こんな歴史的スキャンダルを劇的に抱える場がある一方、我らが地、極東日本では、VKMが、或いは91年7月のフレアーが、絶対に譲らなかったことが、割と簡単に、譲りまくられたりもしている。
インターナショナル・チャンピオン、Gババは、或る日辞表を提出。インターナショナル・タイトルベルトを置いて、そこを後にする。しかしハワイはPWFのブレアース卿は、負けていないババは引き続きインターナショナル・チャンピオンの権限を有するとして、依然チャンプとしてトリート。PWFワールドタイトルの創設の経緯は、簡単に言うとそういうことのはず。
後にPWFタイトルはインターナショナル・タイトルと同根だとして、NWAの実質的なオーヴァーもあり、TCタイトルの名のもとに統合される。そしてそこから同じ経緯で、GHCタイトルが後年分裂する。いずれにしても、チャンプは会社に従順で、タイトルは会社のものという意識が見て取れる。
しかし、戦いの末にということを経ないで行われたタイトル移動は、実質ファン不在。ファンの中では、タイトル史はそこでひとつの注釈ピリオドを要することとなる。
インターナショナル・タイトルは、テーズからリキドゼンが奪い、それをJWA、大木、IWE、オールジャパン、PWFが順に管理してきたことでも分かるように、これは各会社や組織団体のプロパティではない。これもやはり、我々ファンを含め、レスリングの歴史に係わってきた、全ての人々の、共通の財産である。ババがAJに持ち出しても、コバシがNOAHに持ち出しても、本来は構わないもののはずだ。「to be the MAN, you have to beat the MAN.」である。リング上でのピンを伴わないタイトル移動は、ファンにはなかなかタイトルが移ったとは見えないものである。
インターナショナル・タイトルの発端は、今ではアントニオ・ロッカにあると考えるのが、一般的。アルゼンチンの伝説的なスターが勇躍アメリカに上陸した時、誰彼ともなく、彼をインターナショナル・チャンピオンとしてトリートしたことが、最初だと言われている。
しかし上陸緒戦のテキサスでのテーズ戦で、ロッカはテーズに2連敗。この時に、テーズはロッカから、インターナショナル・チャンピオンの称号を奪ったのだとも、NWAがアルゼンチンのインターナショナル・チャンピオン、強豪ロッカに勝った栄誉を称え、新たにテーズを、NWAヴァージョンのインターナショナル・チャンピオンにしたのだとも、言われている。
NWAというのは、その正式名称からも推察されるように、実は意外にドメスティックな組織。NWAが指すワールドとはアメリカのことで、海外向けには、NWAインターナショナルという、NFLインターナショナルのような組織が出張るのが、理論的筋だったとも、実は言われている。
それで、外国人のリキドゼンには、NWAが外国人にむけて出来る最大限の賛辞としての、インターナショナル・タイトルを引き合いに出させたのだと。
ちなみにロッカはテキサスでの敗戦後も、本格参戦したNYで、変わらずインターナショナル・チャンピオンとしてトリートされ続けた。80年代前半にフジナミとチョーシューの間で争われたWWFインターナショナル・タイトルは、古舘伊知郎によってロッカ・メモリアルの代名詞を拝命していたが、現在のGHCタイトルとて、言わばロッカ・メモリアルのひとつ。WWFインターナショナル・タイトルを統合したとも言えるIWGPタイトルにも勿論、ロッカのメモリは息づく。
TCタイトルにはもうひとつ、UNタイトルの歴史が含まれているが、UNタイトルは、実質日本向けに作られた日本のタイトルで、ロッカのインターナショナル・タイトルと統合されるのには、理屈としては馴染まない。UNタイトルについては、日本屈指の偉大な最強レジェンド、トミー・ザ・ジャンボが、フレアーやマードックやロビンソンと織り成した珠玉のメモリが強烈な記録としてあり、独立して独特の道を歩ませた方がいいのでは、とも、思う時もある。TCタイトルとともに、ネーミングには苦労するだろうが。
モントリオール事件や91年のフレアーのケースのような事態が、あまり起こりにくい体質というのも、いいものなのかどうなのか。91年のバッシュのPPVをハイジャックしたナイツ・オブ・ホースメンの連中が、時々うらやましくなることもある。
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