What a Macho | HWD+e

What a Macho

 WWEがDSWを廃し、フロリダのスティーヴ・カーンのスクールと、いわゆるディヴェロップメント契約を結ぶとか。WWEのディヴェロップメントが功を奏していないとは思わないが、誰もが成功しているとも言えない、か。シナは立派にチャンプを務め、今や名チャンプの仲間入りを果さんとしている。しかしシナよりアマチュアスキルに長けるWGTTの二人などは、なかなか世界に挑戦も出来ない段階で足踏みしている。今やWWEにニューフェイスを提供してくれるところは実質OVWだけであり、自前で新人を用意しなくてはならない、はじめての事態にさらされている。TNAやROHなどがコンペティションとして力をつけてくるにつれ、それはより硬直化を進ませるだろう。


 WWFがなぜ全米を制覇できたか。それは800万都市NYを背景にした、潤沢な資金力での引き抜きに基礎を持つ。AWA及びJCPから、スターを根こそぎ引っこ抜いた。AWAやJCPで既に出来上がっていたスターを次から次へと提出出来たのだ。創世記に覇権を手にした者のアドヴァンス。K1もPも罷り通らせているこの理論。MSWAからも大挙してよりどりみどりだった。勿論、ICWからは完全に未知の大物だったマッチョマンを手に入れて、それをセンセーショナルに紹介出来た。


 ICWはいわゆる、NWAに属していないインディーズ。MSWAは実質的にNWAの一部だったが、こっちは正真正銘の独立系の雄だった。ケンタッキーの田舎で、インターナショナル・チャンプを認定し、実力自慢の猛者を集めてこじんまりとした運営を手掛けていた。五輪の狼ボブ・ループ、喧嘩屋ボブ・オートン、後にフレアーを殴り倒したワンマンギャング・ロン・ガーヴィン、天才ラニー・ポッフォ、ジェフ・スォードとダグ・ヴァインズのタグ職人ディヴィルス・デュオ、RVDやゴッドウィンズを育てたマーシャルアーティスト・ロン・スリンカー、そして世界を制すことになるマッチョマン・ランディー・サヴェージ‥。


 インディーズが未来のスターの宝庫であることなど、アメリカでならば周知の事実。HBKやSCSAがテキサスのインディーズから上って来たことなど誰だって知っている。テラ・ライジングがコワルスキーのIWAにいたことも。ベンワーはNJからやって来て、マーク・キャラスもシドもテネシーの怪物出身だ。パワーティームUSAはトライステーツ、ルガーはフロリダをサーキットしていた。レクスタイナー兄弟しかり、ハルクもハートもまたしかり。WWFがロックを純生産したことは、逆に衝撃的ですらあった。


 ロックは、ハイチーフとスゥィートエボニーダイアモンドの血を引く、言わば例外。全米各地のストリクトなマイナーリーグが、メジャーを支えてきたことに違いはない。


 勿論今でも、パワフルなインディーズは全米各地に存在し、それはオハイオヴァレイにつながってもいる。WWEに登場できる頃にはかなり仕上がってもいる。よく出来ているがしかし、ド田舎のインディーICWから、いきなりメジャーで駆け上がった本物の野生動物に比べると、些かこなれ過ぎている感は否めない。


 タイムワーナーをバックにしたWCW資本のパワープラントは、果して何人のカリズマを産んだか。マリガンやニキタ・コロフ以上とも思えないナッシュやゴールバーグは、フレアー全盛だったら出番はあったか。グレゴリー・ヘルムズ一人を産むために、あのパワープラントは存したわけでもあるまい。


 プラントで栽培したディスコ。HTMの亜流の、JBBの更にそのまた二番煎じ。ホンキーのネックブレイカーまで真似たが、観葉植物の悲しさは、80年代のテネシー、アラバマを生き抜いた野生の狼に、及ぶべくもなかった。


 WWEはOVWをしっかり管理し、規格品しか出荷はしなかろう。DSは切るくらいだし、カリフォーニアやプエルト・リコからもオハイオへやって来るいいルートも確保している。しかしそれでも、規格外の場所から、自然萌芽してくる自由な才能は魅惑的だ。


 マッチョマンはアンジェロ・ポッフォのサンで、やはり特別枠かもしれない。しかしあの自分勝手な突き抜けたセンスは、ケンタッキーの隔離されたバーバリック・ロッジだからこそ育まれたように思う。


 スパイダーマンにマッチョマン。ジェイ・リーサルがマネをしているのはマッチョ・キング以降のWWF仕様。やらせているのはナッシュかルッソか知らないが、マッチョマンが出て来てかつての、ケンタッキー産のホンモノを見せてやらねば収まりも付かないような雲行きだ。日本のゴードン・ソーリーこと故杉浦アナ曰く、“電撃の超高血圧男”。その稀有な傑作ギミックは、リーサル以外の何処から再び飛来する。


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