エリック・エンブリーの2ページのカラー | HWD+e

エリック・エンブリーの2ページのカラー

 古い別冊ゴングの背表紙にはこうある。「赤見出しの美学、愛しの東スポに思いを込めて」と。では今、古のゴングのファンは、彼の誌に対して何と言う。愛しのゴングに今、何をこめるのか。


 かつては、ゴングは間違いなく、我々のバイブルだった。竹内は明るく元気に、クレイジーだった。海外に強いゴング。別冊はほとんどが海外ものが占めた。ゴングのマスカラスかマスカラスのゴングか。清水は日本で最強の、メキシコもののプロだった。吉澤のリポートはそつがなかった。ゴングは、インターネットだった。


 タイガーマスク、ホーガンvsアンドレ、IWGP、過激な仕掛け人、長州vs藤波、村松友視そして古館伊知郎。新日本ブームがやって来る。全日本も元気だった。鶴田vsキングコング・ブロディ。全盛期のチャンプ・フレアーは、年に2回もやって来ていた。ブームに伴い、雑誌も売れた。しかし、この頃からゴングは変質していく。


 伸びた部数。つまりブームで参入してきた層を離すわけにもいかなかったのだろう。海外に強いゴングと言われ、自らそう名乗り、故から海外ものファンの信頼を得ていたゴングは変わり、週毎に我々を失望させていく。雑誌の週刊化。BBMに遅れをとっていたゴングは、BBMと競り合う必要にも迫られ、UWFに誌面を割き、遂には女子ものにも手を出すようになっていった。時はWWFがタレントと独占契約を結び、日本にWWFスーパースターズが来なくなっていた折であり、海外に強いゴングに求められるものは、少なくなかったはずなのにだ。ゴングは我々のニーズに逆行するこのニューアティチュードで、読者としての我々を失っていったと思う。


 ゴングの変節は、オリジナル・ゴングの核たる海外ファンを失い、BBMに付け入るスキを与えた。海外ものに全く疎かった男は、海外ものに興味のないファンにのみ訴えかけた。時に垣間見せるゴングの、それでもの海外ものへの肩入れの姿勢も、それを相手にする場合、あまりにも甘く、半端だった。しかしここは日本で、WWFはホーガンを閉ざし、日本のプロモーションは日本もののみ応援してくれることを求める。日本で売る雑誌に海外ものは必要無くなってきた。我々はWWFマガジンやWMEにシフトし、ゴングからも撤退した。両誌は変わらず日本こそ最高を謳ったが、フルカラーグラヴィアのWWFマガジンに馴れた我々は、日本の雑誌に帰ってくることはもうないだろうと、既に確信していた。


 世界のチャンピオンが来なくなり、プライムタイムのTVを追われたのにもかかわらず、それと反比例するように、雑誌の中だけで飛び交った威勢のいい言葉群。雑誌の中でだけ繰り広げられる内戦の最中に、世界は変わった。ブライムタイムの2時間ライヴ、マンデイナイトウォー、NWO、ストーンコールド、WWE‥。エクスペンシヴなセットと黒いマットで覆われたリング下の風景。WWEを見慣れた今、あまりにも20年前然たる日本の姿に唖然とする。キックボクシングやカラテや柔道やアマチュアレスリングが、面白いわけではない。世界を囲えているか否かのダイナミズムの問題だ。


 ゴングは、ゴングの道を歩くべきだった。かつてゴングを愛した海外ファンに引かれた、ゴングらしからぬ雑誌を出し続けることに、果してどれだけの意味があったか。


 ある時ゴングが、“フラムボーヤント”エリック・エンブリーがワールドクラス・タイトルを獲得したことを、カラー2ページで報じたことがあった。久々のゴング魂にうれしく感じたことが想い起こされる。ああいった記事で覆いつくされることこそ、専門誌ゴングの、この国に於ける役割だったのではないか。


 かつて東スポが一面でレスリングを扱わなくなったことを憂い、自誌の表紙でそれを半糾した竹内。そのゴングもいつしか、自慢の海外ものをメーンで取り扱わなくなっていた。別な言い方をすれば、あの時もう、ゴングは終わっていたのである。


 WWEのホームページ等にアクセスすれば、大抵の情報は手に入る現在、日本のものには触れたこともないファンも増えたはずだ。雑誌の役割は終わりつつある。かつてはむさぼるように読んだファイトも、ゴングと同じ変節を辿って終わり、アル・マクギネスなど、名物編集者を出したWMEも、とっくの昔に終わった。


 言わば、とうの昔に相手にされなくなった我々だ。今更未練がましい思いを込めるつもりもない。残った専門誌も、専門局とともに、今や我々などにはほとんど知られない、ドメスティックスターズの攻防を、熱過ぎるくらいに伝えていくのだろう。


 「もし我々が将来、プロレスリングの博物館を作るなら‥」。幼少期における蕎麦屋での感慨。取り憑かれたように吐き出された数々のコピー。マスカラスの竹内やロジャースの田鶴浜など、レスリングがアートであることに純粋に魅了されたクレイジー達が、ブリスコや鉄腕グレアム相手に吠えた時代があったことが、今はただうらやましい。


 先日アウトされたIWEのDVDでは監修を担当している竹内。現在病床にという話も聞いている。雑誌メディアに次があるかは分からないが、かつてのスター達相手のDVDの中で解説を担当出来るのは今でも、ピュアで快活な竹内節しか、これはですね、ないのではないかと思っている。



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