エグイ球を投げるだけじゃない「ピッチングデザイン」の話 | ふたらぼ キャップ投げ&キャップ野球研究所

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 皆さんおはこんばんちは。キャップ野球TV編集長、そして三田キャップ投げクラブ元代表の五島です。高3の頃から始めた競技キャップ野球ですが、始めた頃は期待の若手!みたいな扱いだった僕が、部長業や動画などの仕事を後輩にバトンタッチをするようになるとは、と月日の流れを感じるこの頃です。

 

 個人的な話にはなりますが、大学4年生となったことで諸事情により恐らく次の登板機会がかなり先となる予定です。ということでここらで私が4年間で蓄積してきた自分の投球の設計、言わば「ピッチングデザイン」の話を軽くまとめておきたいと思います。今回の話は割と中上級者向けになりますので注意してください。

 

 

 僕のことを知ってる方ならわかると思いますが、僕は野球経験者でもないし、球速も60km/h強くらいしか出ないし、Tik Tokでバズるような映える変化球が投げられるわけでもありません。

 ですがこの4年間、分析と試行錯誤を繰り返し、それなりに安定した結果が得られたかなと思っています。色々試行錯誤しているけど上手くいかない!という方は、この記事を読むことで球速や変化量を上げることだけが正義じゃない!ということを知っていだだければ幸いです。

 


※注意ですが、ここでは投球のメカニック的な話は一切出てきません。まぁそういう話は野球経験のあるキャッパーとかに聞いた方が求める答えが返ってきそうなのでね。

 そして、ここから話す内容は僕の個人的な投球の自己分析が大部分を占めます。そのため、読んだだけで今すぐあなたの投球に役立つことはないと思います。あくまでどのように良い投球をしていくのかを考えるための見本だと思って読んでください。

 以下、本文です(威厳のため常体で書いてます)


 

1.基本的な考え方

 

 コーナーにベストな球を投げ続けるのはなかなか難しい。場合によってはコーナーにベストな球を投げたのに打たれるケースもある。この場合よく「相手が上手かったから仕方ない」といって片付けるが、本当にそれだけだろうか?ど真ん中に投げて打たれた際に、「制球が悪いせいだ」と思うかもしれないが、本当に制球が悪いだけのせいなのだろうか?

 

 私が考える投球とは基本的に、球速×球質×コース×前の球種とのシナジー×打者の傾向によって構成される。これら全てを完璧にする必要はなく、これらの項目が良ければ良いほど打たれる確率が下がっていくというイメージだ(もちろん全て満たしても0%になることはない)。それぞれについて詳しく見てみよう。

 

 

球速:現状では硬キャップなら60km/h後半〜70km/h台が出ていれば十分。出しすぎると捕手が取れない&変化球は曲がりが悪くなるのでコスパ的にどうだろうかと思う(完全に否定はしないが)。対して60km/h前半は明確な武器がないとなかなか厳しい。(柔キャップの話はここでは省くが、大体これの-10km/h程度なら問題ないだろう)

 

球質:どこからどのように曲がっているのかを把握する。自分のイメージ通りの変化はしているか?途中で減速しているのかしていないのか?コースや高さによる変化の違いはあるか?

 

コース:なぜそのコースに投げると強いのかを考える。その球種をそのコースに投げるのって本当に強いか?その打者にとっての「ど真ん中」はベースのど真ん中とは限らない。不意打ちする球種をコースギリギリいっぱいに投げる意味はあるか?

 

前の球種とのシナジー:ピッチトンネルを意識する球種なのか、しない球種なのか。どの球種の後だと効果的なのかを理解する。

 

打者の傾向:引っ張り傾向or流し傾向、前捌きor後ろ捌き、決め打ちor臨機応変など

 

 

 他にも考えることはあるかもしれないが、とりあえず私が考えていたものは大きくこの5つだ。この5つの項目を使ってどうやって打たれずにストライクを取るかを考えることが基本となる。ここからは具体的に私が私の球種を使って考えてみた一例である。



 

2.自分の球種別考え方

 

ストレート

 

 

球速:60km/h前半〜後半

 

球質:ハイスピンで若干吹き上がる。低めは吹き上がらない分減速が少なく伸びてくる。

 

使い方:ストライクゾーンでストライクを取る用。基本はコースに投げ込むが、右打者のアウトローは十分な間が取れてしまうのでそこまで強くない。真ん中高めボールゾーンに吹上げて空振りorフライアウトを取ることもできる。見逃しストライクをとるなら低めいっぱい、空振りを取りたいならやや高めに投げて吹き上げる。

コーナーに投げることもできなくはないが、球速が遅い&綺麗な球筋なのでコーナーに投げても打たれる可能性はある(特に引き付ける打者)。どちらかと言うと球速&球質が大事そう。

 

他球種とのシナジー:カット、スラット、チェンジはピッチトンネル内に入っているため相性が良い。

カット意識(直前に投げて意識させる)だと下を振らせられる。スラット意識だと引き付けすぎて手が出ないor振り遅れ。チェンジ意識でも振り遅れる。

 

球種開発の経緯:元々はカット質のストレートであったが、コースギリギリでストライクコールがもらえないことが多かったため、綺麗なストレートに修正した。しかしながら素直故によく打たれたため、ライズ成分をつけカットボールと明確に区別した。
 

 

 

カットボール

 

 

球速:60km/h前半〜後半

 

球質:ハイスピンで沈みながら親指方向に変化する。高めは沈まずに真横に曲がる。投手から見て左下側に投げるほどクロスして変化量が増える。全球種の中で1番制球しやすい。

 

使い方:ストライクゾーンでストライクを取る用。ストレートとスラットの中間択。被弾リスクが高いので低めを意識したい。

右打者に対してはどのコースも強いが、特にアウトローはボールゾーンで空振りが狙えること(クロス気味に逃げるため)に加え、割とベースを掠ってストライクコールされやすい。インローは見逃しが狙えるが、決め打ちで引っ張られると1発があるので打者の傾向を見極める。

左打者に関してはインコースがとにかく強い。バックフットスラットと組み合わせるとかなり強い。逆にアウトコース真ん中〜高めは流し方向への被弾リスクが高すぎるため、アウトコースに投げるならボール球〜低めを意識したい。

下を叩きやすいため、低めに投げると使用キャップ(ファンタ)の脆さと併せてピッチャーゴロも狙える。

ありがちな下振るスイングにかち合ってしまうことがあるため、打者がどこを振ってるのかは注意して見る。

 

他球種とのシナジー:

ストレート、スラット、チェンジはピッチトンネル内に入っているため相性が良い。

ストレート意識だと上を振りやすい。スラット意識だと変化量の違いで翻弄できる。チェンジ意識だと振り遅れがち。

 

球種開発の経緯:ストレート修正の過程で元々カット質のストレートだったものをより極端にする事で、カットボールを開発。

 

 

スライダー(スラッター・スラット)

 

 

球速:60km/h前半〜後半

 

球質:ハイスピンで真っ直ぐと同じ軌道から打者の手前で急速に落ちる。

 

使い方:空振りを取る用。見逃してもゾーンを掠らせてストライクをとれることがある。基本的に高さを間違えなければ打たれることはほぼないので、コースはそこまで意識せずベルト付近に良い球質で投げることを意識する。ただ左に対してはバックフットに決めればほぼ100%当たらないので、狙う価値はある。

制球力を信頼してブンブン振り回してくる打者にはボール気味に連投する。前捌きバッターには低め〜ボールに投げ込む。前に立ってくる打者には稀にかち合ってしまうため、より手前で落とすかストレートの球速で押すかを選択する。引き付ける打者にはゾーン勝負でバンバン投げ込む。

一応コース別の効果の差はあるが、コースに投げ分ける精度はそんなにないのでここでは割愛する。

 

他球種とのシナジー:ストレート意識だと消える。カット意識でも変化幅が違うため合わない。チェンジ意識だと振り遅れがち。

 

球種開発の経緯:試合で完璧に決まったはずのスライダーを簡単に打たれたため、空振りが取れるように改良。当時流行っていたスラッター(スライダー+カッター)をキャップで再現するため昔投げていたカッターとスライダーの投げ方を組み合わせてスラッターを開発。


 

 

チェンジアップ

 

 

球速:30~40km/h

 

球質:ストレートの軌道から減速して沈む。シンカーすることもある(意図的ではない)。

 

使い方:空振りを取る用。とにかく低めに投げる。減速成分を意識しないとただの遅いストレートになるので慎重に投げる。

基本的に得意不得意がはっきりしている球種なので、前捌きや決め打ちのバッター以外に投じることはほぼない。

また真っ直ぐに振り遅れているバッターに投げるとかち合ってしまう場合があるので、しっかりと打者を見ること。

 

他球種とのシナジー:ストレート系+スラット系がすべて60km/h台なので、そちらに張っていると泳ぐ。

 

球種開発の経緯:なし。

 

 

 

シンカー

 

 

球速:45km/h前後

 

球質:45°くらいで曲がるシンカー。キレや変化量などの調子の良し悪しが極端。

 

使い方:ストライクゾーンでストライクを取るのが基本だが、低めに投げて空振りを狙うのもなくはない(調子いい時はすごく効く)。基本は右打者の真ん中〜インコースに投げ込む。

外から入れに行ってもいいが、結局ベースを巻くのであんまやりたくない。左打者に対しては、流し傾向の強い相手にはそこまで強くないと思っているし、引っ張り傾向の強い相手には1発があるので正直微妙。ただたまに投げると刺さるので未だ模索中。

 

他球種とのシナジー:球種にスライダー系が多いので、不意に投げると全く合わない。

 

球種開発の経緯:ふざけてフェニックス投法(柏谷 2019)していたら思ったよりシンカーがキレてたので、自分のフォームで投げられるよう改良・開発。


 

3.最後に

 

 いかがだったでしょうか。

 

 今回はピッチングの要素とその設計の考え方についての話を長々とさせていただきました(一部文の都合と私の文章作成能力不足により割愛しましたが)。もちろんここまでの内容すべてを試合中に考えることはありません。あくまでここで述べていることは事前準備であり、試合で投球を組み立てるための設計図作成にすぎません。
 

 試合で抑えたいのであれば、闇雲に速くて曲がる球種を投げることだけが正解ではありません。自分の頭の中で考える球種が再現しやすいキャップ野球だからこそ、こういった試行錯誤、そして「ピッチングデザイン」の面白さといったものにも目を向けると、よりキャップ野球が面白く感じるかもしれません。

 

 途中ちょっと自己満足な話かなぁとも思いましたが、もし1人でも参考になったという方がいれば嬉しいです。

 


 最後に僕が尊敬する偉大なる先人の言葉で締めたいと思います。

 

「知識の本質を見抜いていない状態でいくら数を重ねても、本質を見抜くセンスが有る人間がちょっとやるだけで抜かされます。」

(森下 2020, “【競技キャップ野球】キャッパーが知っときゃ良いこと① 「変化球の原理」”)

 

良ければこっちも読んでくださいね(ふたらぼ内の記事です)。