◇
「ジェジュン」
俺の声に「……?」と首をまわすも、
まだ、意識はどこかに浮遊したままでいる時が、ジェジュンにはよくある。
その大きな鏡のような瞳の奥の定まらない視点が、ようやく俺へと焦点が合う頃を待って、
(昔から相変わらず)木偶の坊みたいな問いかけしか出来ない男へ、お前は可笑しそうに笑う。
「──え?なに?(笑)」
5人で忙しすぎた頃はよくブスッと返された。
『考え事!作詞中!』
タイトなスケジュールの合間に、ふとジェジュンだけロケ隊に背を向け、山河を見つめながら今にも泣きそうな顔をしていて、慌てて声をかけたりした。
『涙が出てるじゃないか!どうした、こっちを向け!』
『うるさい、見るな!』
その時は邪険に掃われたけど、後から彼は‘自然が美しすぎて自分の毎日がどうしようもなく悲しくなった’と言った。
さらに、‘そんな時は黙って抱き締めてくれないと、’と、口を尖らせ、何故か俺は責められた。
つまり、ジェジュンは‘自分がどんな気分でいるかぐらいスグ分かれ’といつも言った。
『だって俺たちは二人でひとつだろ?そうだろ?』
ふたりでひとつだろ?
蜜を湛えたサクランボのような紅い唇をとがらせてジェジュンに見上げられると
いつも俺はグッと息をのみ込んでしまっていた。
その頃はまだ言葉の言いまわしだけだった‘ふたりでひとつ’というフレーズも、
ある時を境に俺たち自身が(──外では言いづらい関係へと)変化してからは、
ジェジュンの小言を締めくくる文句も、こう変わった。
『だって俺たち恋人だろ!?』
だから
あの頃から充分時を重ねた二人だとしても
こうやってジェジュンがベッドの窓から夜のビル街をずっと黙って見下ろしていると、
その裸の背中へかける言葉もどれにしようかと少しの躊躇が生じるが、
やはり ‘抱き締めるだけでいい’ ような気がして
俺はゆっくりと彼を背中から抱いた。
「………ユノ…」
「……考え事?」
「……アハ…ううん、……街の灯りが綺麗でね…」
………
ほら来た。
昔そうやって山河が美しいと言って泣いたんだ。
ここは泣かさないように用心しないとな。
「……ジェジュン…ちょっと俺、激しかったかな、……ごめんな、……愛してるよ」
「………うん?…大丈夫だよ?……どうしたの?
あ、……フフ、わかった。
……俺が黙って向こうむいてたから心配になった?」
─────。
「………なんでわかった?」
「アッハ…そりゃわかるよ。だって」
「……うん?」
「だって…俺たち夫婦だろ?」
……あ……
ジェジュン、
ジェジュンア……
俺……
「…あ、ん、…なに?ユノヤ……もう一回…?」
「……うん」
ベッドに入る前に
いつも二人で嵌める指輪が
こうして絡まり合ってカチカチと音を立てると
俺、強く思うんだ。
「ジェジュン……ウリン…ヨウォニハンケヤ…(俺たちはずっと一緒だ)」
そうだろ?
ジェジュンア…
俺とお前、恋人、夫婦、
今までも、これからも、どれだけ呼び名が変わってもいいさ。
だって俺たちずっと
ウリン ハンケ ニッカ……
一緒だから……。
『ウリハンケニッカ』おしまい。