横浜中華街育ちのお父さんと、上海っ子のお母さんの間に生まれただんなくん。
彼や妹さんにとって、上海は小さな頃から毎年のように訪ね、歩き回った場所です。


家族旅行の最終日は、二人できままに上海を歩く時間をいただきました。
夜になって彼が行きたいと言い出したのは、
川沿いの「外灘(Waitan)」という地域。



外灘の辺りは、かつて上海が外国に割譲されていた頃の船着き場で、
借り主の国々が国威を発現したかのような貿易拠点を建てまくった場所です。
今でも100年くらい前の建物が残っていました。



$なみぶろ



これをね、小さい頃、毎日見に来ていた時期があったんだ。
一ヶ月上海の親戚のところにいたんだけど、
おじさんおばさんに頼んでね、毎日毎晩だよ。


上海は来る度に色々なところが変わってるけど、
この景色だけは、昔からずっと変わらない。
僕たちが年をとっても、ずっと変わらないはずだよ。


と、景色を眺めながら呟くだんなくん。

$なみぶろ




そうだね、中国にとって、これはすごい遺産だね。



そう返したら、



うん、でも、昔この公園は中国人立入禁止だったんだ。
外国人と、その犬は入れたんだけど。
犬は入れても、中国人は入っちゃいけなかったんだよ。

と、彼は付け加えました。








気象塔の上から見下ろすと、
眼下では沢山の地元っ子や観光客が、きゃっきゃしながら写真を撮ったり、
肩を寄せ合ったり、何か押し売りしたり、何か喚いたりしていました。
現代では、当たり前のことです。



100年近く変わらない夜景の脇に彼らを見ながら、
「現代の当たり前」を享受できなかった昔の人たちのこと、
理由をつけては隣に生きる人間を締め出して何かを独り占めしていた昔の人たちのことを
想いました。

そして、内容は違えど、現代の私たちも同じことをしているかもしれないなぁ、
と思いました。






行きたい場所に行けない、
自分の意志を発現することができない、

そんな縛りが、世界中で「昔話」になりますように。
新しい「当たり前」を創るのは、私たちの世代、なんだよね。