■第985回食品安全委員会
日付:令和7年6月3日(火)
議題
(1) 食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について
・動物用医薬品 1案件 (農林水産からの説明)
動物用ワクチンの添加剤として使用する成分(大腸菌J5株由来成分)
(2) 農薬第五専門調査会における審議結果について
・「スピロジオン」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について
(3) 食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について
・農薬「スピロジクロフェン」に係る食品健康影響評価について
・農薬「ベンジルアデニン」に係る食品健康影響評価について
・動物用医薬品「d-クロプロステノールナトリウムを有効成分とする牛及び豚の注射剤(ダルマジンシンク)」に係る食品健康影響評価について
・動物用医薬品「塩酸ロメフロキサシンを有効成分とする馬の点眼剤(ロメワン)」に係る食品健康影響評価について
・動物用医薬品「ジニトルミド」に係る食品健康影響評価について
・飼料添加物「Trichoderma reesei RF5427株を利用して生産されたキシラナーゼを原体とする飼料添加物」に係る食品健康影響評価について
(4) その他
審議の内容
(1) 食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について
○動物用医薬品 1案件(動物用ワクチンの添加剤として使用する成分(大腸菌J5株由来成分))
動物医薬品の治験に当たっては、治験使用薬が残留する生産物が食用に供されて人の健康を損なうことのないよう、治験使用薬に含まれる添加剤が、「ワクチンの添加剤として使用される限り人の健康に悪影響を及ぼすおそれはない」との評価を受けていない場合には、治験の実施までに食品安全委員会の評価を受け、休薬期間を判断する運用としているとのことです。
今般、大腸菌J5株由来成分(大腸菌O111:B4株のO抗原が完全に欠失しているUDP-ガラクトース-4-エピメラーゼ欠損J5株を培養し、それを精密濾過して菌体を取り除いたもの(培地成分を除く))を添加剤として使用することについて、食品健康影響評価が依頼されたものです。
本件については、動物用医薬品専門調査会で調査審議を行うこととなりました。
(2) 農薬第五専門調査会における審議結果について
○「スピロジオン」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について
スピロジオンについては、かんきつ、ばれいしょ等に用いる新たな殺虫剤として農薬登録申請があったことを受け、2024年11月27日付けで内閣総理大臣から残留基準値設定に係る食品健康影響評価の要請があり、農薬第五専門調査会で調査審議を行ったものです。
同専門調査会は、各種試験結果から、農産物及び畜産物中のばく露評価対象物質をスピロジオン及び代謝物Bとした上で、許容一日摂取量(ADI)は0.047 mg/kg 体重/日、急性参照用量(ARfD)は一般の集団に対しては0.3 mg/kg体重/日、妊婦又は妊娠している可能性のある女性に対しては0.1 mg/kg体重/日とそれぞれ設定しました。
この審議結果(案)については、6月4日(水)から7月3日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。
(3) 食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について
○農薬「スピロジクロフェン」に係る食品健康影響評価について
本農薬については、農薬の適用拡大申請に伴う基準値設定に当たり、内閣総理大臣から2024年11月27日付けで食品健康影響評価の要請があったことから、農薬第二専門調査会での審議を経てパブリックコメントの手続きを行っていたものです。
期間中に意見・情報の提出はなかったため、専門調査会の結論を変更することなく、農産物中のばく露評価対象物質はスピロジクロフェン(親化合物のみ)、畜産物中のばく露評価対象物質はスピロジクロフェン及び代謝物M1と設定した上で、ADIを0.013 mg/kg 体重/日と設定するとともに、ARfDについては設定する必要はないと判断し、内閣総理大臣に通知することとしました。
○農薬「ベンジルアデニン」に係る食品健康影響評価について
本農薬については、りんごに用いる新たな農薬の登録申請があったことを受け、内閣総理大臣から2024年10月2日付けで食品健康影響評価の要請があり、農薬第四専門調査会での審議を経てパブリックコメントの手続きを行っていたものです。
期間中に意見・情報の提出はなかったため、専門調査会の結論を変更することなく、農産物中のばく露評価対象物質をベンジルアデニン(親化合物のみ)と設定した上で、ADIは0.062 mg/kg 体重/日、ARfDは0.35 mg/kg体重/日とそれぞれ設定することとし、内閣総理大臣に通知することとしました。
○動物用医薬品「d-クロプロステノールナトリウムを有効成分とする牛及び豚の注射剤(ダルマジンシンク)」に係る食品健康影響評価について
d-クロプロステノールを有効成分とする動物用医薬品は食品健康影響評価を受けており、本剤は主剤をナトリウム塩に変更した製剤です。また、用法及び用量、d-クロプロステノールとしての含有量並びに添加剤の種類及び含有量に変更がありません。食品を通じて人が摂取することを考えたとき、本製剤と評価済みの製剤との違いは、ナトリウムが増加していることのみであり、ナトリウムは食品から通常摂取されている成分です。
そのほかにも既存の評価結果を変更する必要があるような新たな科学的知見はなかったため、動物用医薬品専門調査会は、本製剤が適切に使用される限りにおいては、食品を通じて人の健康に悪影響を当てる可能性は無視できるものと判断しました。
このため、「食品安全委員会が既に食品健康影響評価の結果を有している評価対象について、食品安全基本法第24条の規定に基づき意見を求められた場合の取扱いについて」(平成21年10月8日食品安全委員会決定)に基づき、意見・情報の募集は行わず、結果を農林水産大臣に通知することとしました。
○動物用医薬品「塩酸ロメフロキサシンを有効成分とする馬の点眼剤(ロメワン)」に係る食品健康影響評価について
動物用医薬品「塩酸ロメフロキサシンを有効成分とする馬の点眼剤(ロメワン)」については、企業から「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に基づく再審査の申請があったことを受け、2025年1月22日付けで農林水産大臣より食品健康影響評価の要請があり、肥料・飼料等専門調査会での審議を経てパブリックコメントの手続きを行っていたものです。
期間中に意見・情報の提出はなかったため、専門調査会の結論を変更することなく、本製剤が動物用医薬品として適切に使用される限りにおいては、食品を通じて人の健康に影響を与える可能性は無視できる程度と考えられるとの評価結果を農林水産大臣に通知することとしました。
○動物用医薬品「ジニトルミド」に係る食品健康影響評価について
ジニトルミドは、肉用鶏に使用される抗コクシジウム剤であり、2006年のポジティブリスト導入時に設定された基準値の見直しのため、2020年2月13日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価の要請があり、肥料・飼料等専門調査会での審議を経て、パブリックコメントの手続きを行っていたものです。
期間中に意見・情報の提出はなかったため、専門調査会の結論を変更することなく、ジニトルミドのADIを0.006 mg/kg 体重/日とすることとし、内閣総理大臣に通知することとしました。
○飼料添加物「Trichoderma reesei RF5427株を利用して生産されたキシラナーゼを原体とする飼料添加物」に係る食品健康影響評価について
Trichoderma reesei RF5427株を利用して生産されたキシラナーゼ(AM24キシラナーゼ)を原体とする飼料添加物について、飼料添加物の成分規格及び製造の方法等の基準並びに当該飼料添加物を含む飼料に係る飼料一般の製造の方法の基準を設定すべく、2024年12月11日付けで農林水産大臣から食品健康影響評価の要請があったところ、肥料・飼料等専門調査会での審議を経て、パブリックコメントの手続きを行っていたものです。
期間中に意見・情報の提出はなかったため、専門調査会の結論を変更することなく、Trichoderma reesei RF5427株を利用して生産されたキシラナーゼを原体とする飼料添加物は、飼料添加物として適切に使用される限りにおいては、食品を通じて人の健康に影響を与える可能性は無視できる程度と考えられるとの評価結果を農林水産大臣に通知することとしました。
当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。
https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20250603fsc