■第944回食品安全委員会

日付:令和6年6月25日(火)
 

議題

 

(1)  食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について

・飼料添加物 1品目(農林水産省からの説明)

遺伝子組換え技術によって得られたTrichoderma reeseiを利用して生産されたフィターゼ

(2)  遺伝子組換え食品等専門調査会における審議結果について

・「PRO-No.1株を利用して生産されたL-プロリン」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

(3)  食品安全基本法第23条第1項第2号の規定に基づき委員会が自ら行う食品健康影響評価について

・「有機フッ素化合物(PFAS)」に係る食品健康影響評価について

(4)  食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について

・遺伝子組換え食品等「JPBL011株を利用して生産されたα-アミラーゼ」に係る食品健康影響評価について

・飼料添加物「カシューナッツ殻液」に係る食品健康影響評価について

(5)  「遺伝子組換え食品(種子植物)に関する食品健康影響評価指針(案)」及び「遺伝子組換え微生物を利用して製造された添加物に関する食品健康影響評価指針(案)」について

(6)  事前・中間評価部会の審議結果について

・「食品の安全性確保のための研究・調査の推進の方向性(ロードマップ)」の改正(案)について

・令和6年度食品安全確保総合調査課題(案)について

(7)  その他

 

審議の内容

 

(1)  食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明

 

本飼料添加物については、Trichoderma reesei RF7727株を宿主として、Escherichia coli 由来のフィタ-ゼを産生する遺伝子に変異を加えた遺伝子(qpt2遺伝子)が導入された生産菌Trichoderma reesei RF8694株によって産生されるものであり、本年2月 27 日付けで、農林水産大臣から遺伝子組換え飼料添加物の安全性に関して評価要請を受けているところです。

今回、6月19日付けで農林水産大臣から、飼料添加物の製造の方法等の基準及び成分規格並びに当該飼料添加物を含む飼料に係る飼料一般の製造の方法の基準の設定に向けて、あらためて食品健康影響評価の要請があり、今回説明を受けました。

 

今後、肥料・飼料等専門調査会で審議することとしました。

 

(2)  遺伝子組換え食品等専門調査会における審議結果

 

○ 遺伝子組換え食品等「PRO-No.1株を利用して生産されたL-プロリン」

 

本添加物は、Escherichia coli K-12 株由来の突然変異株を宿主として、L-プロリン生合成経路に関与する目的遺伝子の導入等を行った PRO-No.1 株を利用して生産された L-プロリンです。本年3月19日付けで、厚生労働大臣より食品健康影響評価の要請があったことから、遺伝子組換え食品等専門調査会で審議を行ったものです。

 

同専門調査会は、以下の理由から、本添加物は安全性が確認されているとして、あらためて「遺伝子組換え微生物を利用して製造された添加物の安全性評価基準」による評価は必要ないと判断しました。

・製造工程において、生産菌及び発酵副生物が除去され、晶析により結晶として高度に精製されており、食品添加物公定書規格の含量規格を満たしていることを確認したこと

・また、従来のL-プロリンと比較して、既存の非有効成分の含有量が安全上問題となる程度にまで増加しておらず、かつ、有害性が示唆される新たな非有効成分を含有していないと考えられたこと

 

この審議結果(案)については、6月26日(水)から7月25日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

(3)  食品安全基本法第23条第1項第2号の規定に基づき委員会が自ら行う食品健康影響評価について

 

○「有機フッ素化合物(PFAS)」に係る食品健康影響評価について

 

「有機フッ素化合物」については、2023年1月31日に食品安全委員会が自ら評価を実施することが決定された後、2023年2月7日に設置したワーキンググループ(WG)による審議を経て、パブリックコメントの手続きを行いました。

 

期間中3,952件の意見が提出されたことから、事務局から、評価書(案)の主な項目毎に回答方針について検討を行いました。本日その結果について説明がありました。

委員会は、この内容について了承した上で、現時点で得ることのできたデータ及び科学的知見に基づき、PFOS 及びPFOA の耐容一日摂取量(TDI) として、以下のとおり設定しました。

PFOS 20 ng/kg 体重/日(2×10-5 mg/kg 体重/日)

PFOA 20 ng/kg 体重/日(2×10-5 mg/kg 体重/日)

また、PFHxSについては、評価を行う十分な知見は得られていないことから、現時点では指標値の算出は困難であると判断しました。

 

以上の結果について関係大臣に通知するとともに、委員会として、本評価書を踏まえた対応を速やかに検討いただくよう求めることとしました。

 

(4)  食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について

 

○ 遺伝子組換え食品等「JPBL011株を利用して生産されたα-アミラーゼ」

 

JPBL011株を利用して生産されたα-アミラーゼは、2023年7月4日付けで、農林水産大臣から飼料添加物としての安全性について食品健康影響評価の要請があったことから、遺伝子組換え食品等専門調査会で審議を経て、パブリックコメントの手続きを行いました。

 

期間中3件の意見が提出されましたが、組換え体由来の新たな有害物質が生成され、肉、乳、卵等の畜産物中に移行する可能性、遺伝子組換えに由来する成分が畜産物中で有害物質に変換・蓄積される可能性及び当該成分が家畜の代謝系に作用し、新たな有害物質が産生する可能性はないと考えられることから、当該飼料添加物を摂取した家畜に由来する畜産物については、人の健康を損なうおそれはないと判断して、農林水産大臣に通知することとしました。

 

○ 飼料添加物「カシューナッツ殻液」

 

2023年8月30日付けで農林水産大臣から、飼料添加物の指定並びに飼料添加物の基準及び規格の設定について食品健康影響評価の要請があったことから、肥料・飼料等専門調査会での審議を経て、パブリックコメントの手続きを行いました。

 

期間中意見の提出はなく、専門調査会の結論と同様に、本飼料添加物が飼料添加物として適切に使用される限りにおいては、食品を通じて人の健康に影響を与える可能性は無視できる程度と判断して、農林水産大臣に通知することとしました。

 

(5)  「遺伝子組換え食品(種子植物)に関する食品健康影響評価指針(案)」及び「遺伝子組換え微生物を利用して製造された添加物に関する食品健康影響評価指針(案)」

 

これらの食品健康影響評価指針について、用語及び定義の整理、重複項目の整理、新たな解析技術への対応等のアップデートが必要などの観点から、遺伝子組換え食品等専門調査会で改正作業を行っていた草案について、本年3月26日の第935回食品安全委員会で報告を受けた後、パブリックコメントの手続きを行いました。

期間中前者については99件、後者については20件の意見がそれぞれ寄せられましたが、一部字句の修正を行った上で、専門調査会の案の通り改正することについて了承しました。

 

(6)  事前・中間評価部会の審議結果について(「食品の安全性確保のための研究・調査の推進の方向性(ロードマップ)」の改正(案))

 

このことについて、研究・調査企画会議事前・中間評価部会から、「食品安全委員会が行う研究・調査事業の位置づけと展望」(2章)及び「食品健康影響評価を取りまく現状と課題」(3章)を追加した上で、「研究・調査の方向性(ロードマップ)」(4章)の見直し改正案を作成した旨報告があり、案の通り決定されました。

 

○ 令和6年度食品安全確保総合調査課題(案)

 

本年6月17日に開催した研究・調査企画会議事前・中間評価部会の審議を受けて提出された、以下の課題について決定しました。

・IT・AI を活用した食品安全情報収集システムに関する実証事業

 

(7)  その他

 

食品安全委員会では、山本委員長を除く6名の委員が、6月末で3年間の任期が満了となります。浅野委員、香西委員、川西委員、松永委員、吉田委員、脇委員から、この3年間を振り返っての挨拶がありました。

 

当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20240625fsc