■第931回食品安全委員会
日付:令和6年2月27日(火)

議題

(1)    食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明
・農薬 7品目(厚生労働省からの説明)
エトフェンプロックス
フルオキサストロビン
ヘキサコナゾール
ベンチアバリカルブイソプロピル
ペンチオピラド
マンデストロビン
メタフルミゾン
・農薬及び動物用医薬品1品目(厚生労働省からの説明)
テフルベンズロン
・動物用医薬品1品目(農林水産省からの説明)
モサプリドクエン酸塩を有効成分とする馬の強制経口投与剤(プロナミドE散1%)
(2)    遺伝子組換え食品等専門調査会における審議結果について
・「LEU-No.4株を利用して生産されたL-ロイシン」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について
(3)    評価技術企画ワーキンググループにおける審議結果について
・「食品健康影響評価におけるベンチマークドーズ法の活用に関する指針」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について
(4)    食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について
・汚染物質「カドミウム」に係る食品健康影響評価について
(5)    令和5年度食品健康影響評価技術研究課題の中間評価結果及び令和6年度食品健康影響評価技術研究新規課題の事前評価結果(案)について
(6)    令和6年度食品安全確保総合調査課題(案)について
(7)    その他

審議の内容

(1)    リスク管理機関からの説明

厚生労働大臣から、2月21日付けで農薬7品目並びに農薬及び動物用医薬品1品目について、農林水産大臣から、同日付けで動物用医薬品1品目について、それぞれ食品健康影響評価の要請があり、今回説明を受けました。

農薬「エトフェンプロックス」は、過去に評価しています(2021年11月16日に第6版を答申)。企業から、この農薬を飼料用とうもろこしにも使用したいとの申請がありました。

農薬「フルオキサストロビン」も過去に評価しています(2020年10月13日に第2版を答申)。企業から、この農薬を、おうとうにも使用したいとの申請がありました。

農薬「ヘキサコナゾール」も過去に評価しています(2016年11月22日に第2版を答申)。この農薬を使用したなす科野菜を輸入する計画があるとのことです。

農薬「ベンチアバリカルブイソプロピル」も過去に評価しています(2021年6月15日に第8版を答申)。企業から、この農薬をほうれんそう及びバジルにも使用したいとの申請がありました。

農薬「ペンチオピラド」も過去に評価しています(2021年9月7日に第6版を答申)。企業から、この農薬を茶、稲等にも使用したいとの申請がありました。

農薬「マンデストロビン」も過去に評価しています(2021年3月16日に第4版を答申)。企業から、この農薬をぶどう、つるむらさきにも使用したいとの申請がありました。

農薬「メタフルミゾン」についても過去に評価しています(2021年1月12日に第6版を答申)。企業から、もも類及びすももにも使いたいとの申請がありました。またうめについて追加資料の提出があったとのことです。

農薬及び動物用医薬品「テフルベンズロン」についても過去に評価しています(2017年12月12日に第2版を答申)。この農薬を使用したその他野菜を輸入する計画があるとのことです。

以上の品目のうち、「エトフェンプロックス」については農薬第三専門調査会において、「ペンチオピラド」については農薬第四専門調査会において、「マンデストロビン」については農薬第五専門調査会においてそれぞれ審議することとしました。

また、「フルオキサストロビン」、「ヘキサコナゾール」、「ベンチアバリカルブイソプロピル」、「メタフルミゾン」並びに農薬及び動物用医薬品「テフルベンズロン」については、追加試験として作物残留試験の結果だけが提出されており、かつ、本委員会の審議に先立って薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会において、「フルオキサストロビン」、「ヘキサコナゾール」、「ベンチアバリカルブイソプロピル」、「メタフルミゾン」及び「テフルベンズロン」のばく露評価を行った結果、食品安全委員会による食品健康影響評価の結果設定された許容一日摂取量(ADI)及び急性参照用量(ARfD)を摂取量が超えないことを確認したとの報告がありました。
このことから、これらについては評価書を改訂することなく、意見・情報の募集を行わずに厚生労働大臣に通知することとしました。

動物用医薬品「モサプリドクエン酸塩を有効成分とする馬の強制経口投与剤(プロナミドE散1%)」については、過去に評価しています(2014年10月14日に農林水産大臣に答申)。馬の便秘疝における消化管運動機能低下の改善を目的として使用されます。企業から、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に基づく再審査の申請があったとのことです。

本製剤については、今回提出された資料から既存の評価結果に影響を及ぼす可能性があると認められないことから、専門調査会による調査審議を経ることなく、今後、委員会において審議することとしました。

(2)    遺伝子組換え食品等専門調査会における審議結果

「LEU-No.4株を利用して生産されたL-ロイシン」は、生産性の向上を目的として、Escherichia coli K-12株由来の突然変異株を宿主として、L-ロイシン生合成経路に関与する目的遺伝子の導入等を行った組換え遺伝子を利用して生産されたL-ロイシンです。
2023年12月5日付けで厚生労働大臣より、遺伝子組換え食品等の安全性に関する食品健康影響評価の要請があったことから、遺伝子組換え食品等専門調査会において審議を行ったものです。

同専門調査会は、以下に掲げる理由から、本添加物について安全性が確認されたと判断し、改めて評価を行う必要はないと判断しました。
・本添加物は、製造工程において、生産菌及び発酵副生成物が除去され、晶析により結晶として 高度に精製されており、 食品添加物公定書規格の含量を満たしていることが確認されていること
・また、 従来のL-ロイシンと比較して 、既存の非有効成分の含有量が安全上問題となる程度にまでは 増加しておらず、かつ、有害性が示唆される新たな非効成分を含有していないと考えられたこと

この審議結果(案)について、2月28日(水)から3月28日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

(3)    評価技術企画ワーキンググループにおける審議結果について

化学物質の食品健康影響評価におけるベンチマークドーズ法を活用する際に基本とする「食品健康影響評価におけるベンチマークドーズ法の活用に関する指針」について、「疫学研究で得られた用量反応データへの適用」の項を追加した一部改正案の審議結果について、評価技術企画ワーキンググループから説明がありました。

この改正案について、2月28日(水)から3月28日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

(4)    食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見

○ 汚染物質「カドミウム」

カドミウムについては、過去に評価しています(2010年4月28日に第2版を答申)。2008年9月5日付けで厚生労働大臣から、「ガラス製、陶磁器又はホウロウ引きの器具又は容器包装」についての溶出量等の改正に向けた食品健康影響評価の要請があったことから情報収集等を経て、2021年から汚染物質等専門調査会における審議を経てパブリックコメントの手続きを行いました。
期間中4件の意見が提出されましたが、一部字句の修正を加えた上で評価書(案)のとおり決定し、厚生労働大臣に通知することとしました。

(5)    令和5年度食品健康影響評価技術研究課題の中間評価結果及び令和6年度食品健康影響評価技術研究新規課題の事前評価結果(案)について

○令和5年度に実施した研究の中間評価結果

令和5年度に採択し、令和6年度も継続を予定している以下の9課題全てについて令和6年度の継続が必要であると判断するとともに、それぞれ評価所見等をとりまとめた結果について報告がありました。
・誘電泳動法を用いた細胞分離・捕捉技術の確立によるViable But Non-Culturable状態のカンピロバクターの網羅的特性解析
・食品中に存在するナノ粒子のリスク評価に関する研究
・食品関連化学物質のリスク評価におけるリードアクロス手法の適用と信頼性評価に関する研究 
・国際動向に鑑みた食品中の残留農薬に係る発達神経毒性学分野のリスク評価手法に関する研究 
・養殖水産動物における薬剤耐性指標細菌の設定及びモニタリングの試行 
・アレルギー誘発性を有する植物に由来するタンパク質の網羅的消化性評価 
・食品に含まれるトランス脂肪酸の摂取量推計に係る研究 
・最新のベンチマーク手法をリスク評価に実装するための課題に関する研究 
・リスク評価のデジタル化:情報収集と解析の自動化による省力化と精度向上 

○ 令和6年度食品健康影響評価技術研究新規課題の事前評価結果(案)

令和5年9月12 日から令和5年10 月17 日まで行った公募に応募のあった26課題から、若手専門家育成枠に応募があった2課題を含む計6課題を新規課題として選定し、それぞれ評価所見等をとりまとめた結果について報告があり、案のとおり決定されました。
・ばく露量推定の精緻化に資する食品の喫食量調査手法に関する研究
・日本で食経験の乏しい昆虫を新食品素材とする場合のリスク評価に関する研究
・食品健康影響評価におけるOECD QSAR アセスメントフレームワーク(QAF) に基づく変異原性評価法の実装
・人工知能技術を用いた農薬評価書活用システムのフィージビリティスタディ
・HEV を中心とした豚由来の食中毒起因微生物のリスク評価に向けた研究
・ナノマテリアルの粒径閾値の設定に向けた経口毒性解析に関する研究

(6)    令和6年度食品安全確保総合調査課題(案)について

本年2月7日に開催した研究・調査企画会議事前・中間評価部会の審議を受けて提出された、以下の4課題について決定しました。
・アレルゲンを含む食品のファクトシート(落花生)等の作成に向けた科学的知見の調査
・くるみアレルギーに係る食品表示についてのファクトシート作成のための情報収集
・農薬リスク評価に関する海外状況調査(令和6年度)
・食品添加物の海外の評価結果及び科学的知見に関する情報収集


当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。
https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20240227fsc